シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.2 前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)

泌尿器科(副院長)門脇 照雄
(副部長)今西 正昭

1.はじめに

最近、排尿に勢いが無い、トイレへ行く回数が増えたといったような排尿障害を訴える中高年男性が増加しています。これらの症状の多くは前立腺肥大症によるものです。前立腺は男性特有の生殖機能にかかわる臓器であり、膀胱の下に位置し中央に尿道が通っています。前立腺では精液の一部である前立腺液が作られており、正常では栗の実程度の大きさです。ところが年齢とともに大きく(肥大)なり、このため中央を通っている尿道を圧迫し排尿障害の原因となります。前立腺肥大症は加齢により男性ホルモンの分泌が低下し、ホルモンバランスが崩れることが原因のひとつと考えられていますが現在のところはっきりとした原因はわかっておりません。

2.症状

前立腺肥大症は良性の疾患ですが、放っておくと排尿障害も増悪し尿が出なくなることもあります。

第1期(刺激症状期)
尿意を頻回にもよおすようになり特に夜間の排尿回数が増える、尿線が細くなり排尿時間がかかるといったような排尿障害がおこります。

第2期(残尿発生期)
排尿障害が増悪し、排尿後も尿が残った感じがしたり実際に尿が残るようになります。

第3期(慢性尿閉期)
尿線がしばしば途絶して排尿がきわめて困難となり、時に排尿できなくなる(尿閉)ことがあります。

3.治療

前立腺肥大症の治療は薬物療法と外科的治療があります。症状が軽ければ薬物療法で治療できますが、症状が進行すると外科的治療が必要になってきます。

薬物療法
  • α1遮断薬 前立腺部分の尿道および膀胱出口の筋肉をゆるめて排尿障害を軽減させます。
  • 抗男性ホルモン剤 肥大した前立腺を縮小させることにより症状を軽減します。
  • 漢方薬、植物製剤 自覚症状を軽減させます。
外科的治療
  • 経尿道的前立腺切除術 内視鏡により肥大した前立腺を尿道内側より切除します。
  • 前立腺摘除術 非常に大きな前立腺の場合に下腹部を切開し肥大した前立腺腫を摘除します。
  • 高温度療法 尿道内に挿入したカテーテルによりマイクロ波を照射し、前立腺組織を壊死させます。
  • 尿道ステント留置術 肥大した前立腺により狭くなった尿道にステントを留置して尿道を確保します。
4.おわりに

前立腺肥大症は老化現象の1つとして考えてもよい病気ですが、症状が進行すると尿路感染症や腎障害を引き起こすことがあります。また、最近前立腺癌が増加しており、その症状も前立腺肥大症とよく似た排尿障害です。これらのことからも排尿障害の自覚症状がある場合は早いうちに専門医に相談されることをお勧めします。

(参考)国際前立腺症状スコアー

※合計が8点以上であれば泌尿器科医の診察をお勧めします。

項 目 なし 5回に
1回未満
2回に
1回未満
2回に
1回位
2回に
1回以上
ほとんど
いつも
1.最近、排尿後に尿がまだ残っている感じがありましたか 0 1 2 3 4 5
2.最近、排尿後2時間以内にもう1度行かねばならないことがありましたか 0 1 2 3 4 5
3.最近、排尿途中に尿がとぎれることがありましたか 0 1 2 3 4 5
4.最近、排尿を我慢するのがつらいことがありましたか 0 1 2 3 4 5
5.最近、尿の勢いが弱いことがありましたか 0 1 2 3 4 5
6.最近、排尿開始時に力む必要がありましたか 0 1 2 3 4 5
項 目 0回 1回 2回 3回 4回 5回
7.最近、床に就いてから朝起きるまで普通何回排尿に起きましたか 0 1 2 3 4 5

※上記の表の合計点数は何点でしたか?

0~7点:軽症  8~20点:中等症  21~35点:重症

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