シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.12 胃癌

外科(副部長) 道清 勉

【胃癌の患者さんて、どれくらいいるの?】

胃癌患者さんを年度ごとに集計するような統計がありませんので、推計になりますが、1995年のおおよその胃癌罹患数は10万人で、全癌罹患数の約20%であるという報告があります。

一方、平成11年の人口動態統計によりますと、胃癌による死亡数は50,676人(男性 32,788人、女性 17,888人)で、癌による全死亡数290,558人の17.4%に相当します。これは、年々、減少傾向にあるとはいえ、肺癌の18.0%に次いで第2位にあります。

また、人口の高齢化に伴い年々、胃癌の平均死亡年齢も徐々に高齢化し、1995年には男性70.1歳、女性71.9歳となり、1950年と比べると、男女とも、約10歳も高齢化しています。やっぱり、胃癌は、日本人のかかりやすい病気なんですね。

【胃癌に良いこと、悪いことは?】

食物としては、まず野菜の摂取は胃癌予防効果があると言われています。特に緑黄色野菜などの生野菜の方が効果が高いという研究が多いです。ニンニクが胃癌の予防に効果があるという研究もあります。緑茶を1日10杯以上飲む人に胃癌の予防効果があったという報告もあります。ビタミンでは、やはりビタミンCがいいと言われています。

では、胃癌をおこしやすい危険因子はというと、食塩の過剰摂取・米飯の多食・唐辛子などが言われています。喫煙は、多くの研究では胃癌の危険因子ですが、肺癌ほどの関連性はないとされています。お酒を飲まれる方は多いと思いますが、飲酒は胃癌の危険因子ではないだろうと言われています。

最近、胃潰瘍の原因のひとつとして注目されている、ヘリコバクター・ピロリ菌がありますが、これが胃癌の発生に関係するのではという最新の研究がありますが、まだまだ議論の余地の多いところです。この菌は日本人の場合、50歳代では約半数の人がもっているとされており、特別な予防法はありませんが、これだけで胃癌になるのではないという意見が一般的です。

【胃癌の初期症状】

どの癌でもそうですが、癌は初期には痛みをもたらすことはまれであり、胃癌の場合も胃の痛みが胃癌の最初の症状という場合は少ないです。しかし、胃潰瘍を同時に合併していれば、胃の痛みで検査をした結果、偶然に胃癌が発見されるということもないことはありません。比較的に頻度の高い症状ということになると、食欲不振・吐き気・みぞおちのあたりの不快感などが胃癌患者さんの初期症状です。これらの症状は、胃癌に特有のものはひとつもなく、日常生活では見過ごされてしまいやすいものです。したがって、少しでもこれらの症状を自覚したら内科を受診して、専門医の診察を受けることが重要です。

胃癌は今日では、早期発見される機会が増えたのは事実ですが、依然として目立った症状のないまま手遅れの状態で発見される患者さんも多く、この傾向は特に高齢者に多いので注意して下さい。

【胃癌の診断は?】
(1)胃透視

いわゆるバリウムをのんで行う胃の検査です。検診では、この検査が行われて我が国の胃癌治療成績の向上に寄与しているといわれています。

(2)胃内視鏡検査

いわゆる胃カメラ検査です。直径10mmのファイバースコープで胃の内面を観察し、組織を採取したりする検査です。何も異常がなければ早い人では数分で検査は終了します。癌が発見されたりしますと、その精密検査のためにさらに10分以上時間がかかることが普通です。癌の診断をつけるためには、この検査は必須です。

【最近の胃癌治療は?】

残念ながら、これだけ医学の発達した現代においても、胃癌は切除(切り取ること)してしまうのが、最も有効な治療法です。何十年か先の将来には、切らなくても胃癌を治す新薬が開発されるかもしれませんが、少なくとも現在では、切除することが最も確実な治療法です。近年では、胃の手術においても、できるだけメスを入れる傷を小さくして、術後の痛みを軽くする手術方法が考案され、当院でも、それを積極的に取り入れています。この手術法は、胆石の患者さんにおいて、発達した腹腔鏡を用いた手術です。しかしこの方法は、どの胃癌に対しても可能というわけではありません。やはり今のところ早期癌が対象となります。

もう一つの最近の流れは、胃の切除を行った後の吻合に、自動縫合器という機器を用いるようになってきたという点です。これによって、手術に職人芸という要素が少なくなり、誰が行っても安定した成績が得られるようになってきています。

最後に、どの癌においてもそうですが、胃癌においても、早期発見が完治するには一番大切であることを強調して締めくくりたいと思います。

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