シリーズ病気 No.21 タバコ病(喫煙による病気)
内科(副院長) 藤井 隆(ふじい たかし)
~タバコは吸う人はもちろん周りの人も病気にします~
喫煙は「百害あって一利なし」と言われる事もあるくらい、健康に悪いことは良く知られた事実です。実際、癌、心臓病、脳卒中などの生活習慣病の中で大きな危険因子とされていますし老化も促進します。例えば、煙草は脳梗塞・心筋梗塞の原因となる血栓を作ります。喫煙者の方で40代の働き盛りの年齢で死亡にいたったり後遺症のため社会生活に支障をきたすことは稀ではありません。また喫煙は当然のことですが直接に口腔・咽頭・喉頭・気管支・肺を傷害します。肺気腫・慢性気管支炎の大多数の原因は喫煙によります。また気管支喘息の方でも喫煙により気道炎症、アレルギー反応が悪化し治療の効果があがりません。
煙草の発癌物質は細胞の遺伝子を傷つけ正常細胞を癌細胞に変化させます。とくに肺癌は喫煙との関連が高いものですが、近年男性、女性ともに肺癌による死亡が増加しています(男性では胃癌を抜いて肺癌が癌の部位別死亡率でトップになりました)。煙草の発癌物質は唾液とともに飲み込まれます。呼吸器系だけでなく食道・胃腸などの消化管をはじめとして全身にばらまかれますので煙草はすべての癌に関係すると言っても過言ではありません。
このほか、妊娠中の喫煙が胎児発育不良(出生時の低身長・低体重)、流産・早産・死産、出生後の乳幼児突然死症候群、小児喘息発症の危険因子になることも明らかになっています。 また近年、煙草を吸わない人に対する健康被害、すなわち「受動喫煙」の危険性が重大視されています。煙草の煙には、本人が吸う「主流煙」と、煙草の先から立ち上る「副流煙」とがありますが、副流煙の方が発癌物質、有害物質(タール・ニコチン・一酸化酸素など)が数倍から数十倍も多いことが分かっています。煙草の健康被害は、決して吸う人だけの問題ではないのです。このため、わが国でも「健康日本21」という21世紀における国民健康作り運動の具体的目標の中に「たばこ」の問題がとりあげられています。また、ご存知のように昨年5月から実施されている健康増進法で、学校、病院、百貨店など多数の人が利用する施設では受動喫煙の防止策を取らなければならないことになりました。当院でも健康増進法施行に伴い、昨年11月から職員は館内禁煙を徹底しています。
このように喫煙は個人の問題であるとともに家族・社会の問題でもあります。これからの社会を担う若い世代、子どもの喫煙を防ぐためにも大人の方々は率先して禁煙に取り組んでいただきたいものです。
喫煙という行為は「ニコチン依存症」によるものですので禁煙補助にはニコチン置換療法として「ニコチンパッチ」と言う貼り薬を使用する方法(通常8週間)が最も無理なく禁煙できます。ご自分のためにも、また周囲の人のためにも是非禁煙をおすすめします。火事の心配も減りますし、経済的にも有利です。街もきれいになります。唯一気になることとして過食になり体重が増加する場合があります。味覚や嗅覚、胃腸の調子が良くなり食べ物がおいしくなるためですが、それでも禁煙のメリットの方がはるかに多いです。禁煙すれば、その日から肺癌や心筋梗塞で死亡する危険率は徐々に低下していきます。禁煙を試みてみたいと思われる方は、かかりつけの先生または当院の担当医にどうぞご相談下さい。
主なタバコ病(喫煙が危険因子となる病気)
- 癌【口腔癌・咽頭癌・喉頭癌・肺癌・食道癌など】
- 心臓病【狭心症・心筋梗塞など】
- 脳卒中【脳梗塞・くも膜下出血など】
- 閉塞性動脈硬化症【下肢皮膚潰瘍、壊疽など】
- バージャー病 呼吸器病【慢性気管支炎・気管支喘息・肺気腫など】
- 歯周病
- 胃潰瘍
煙草の主流煙と副流煙

