シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.24 貧血のお話

内科(副部長) 松梨 達郎(まつなし たつろう)

人間が生きていくためには酸素が必要です。肺から吸い込んだ空気中の酸素を全身へ運ぶ働きを持っているのがヘモグロビン(血色素)という赤い色素ですが、そのヘモグロビンが欠乏している状態が貧血です。貧血の症状としては、ヘモグロビン欠乏により顔色不良が、酸素不足により全身倦怠感、めまい、失神、頭痛などがおこり、欠乏している酸素を全身へもっとたくさん送り込もうとして心臓や肺ががんばるために動悸、息切れがおこります。いわゆるめまい、失神などの "脳貧血"症状はヘモグロビン欠乏以外に低血圧や血管狭窄による脳血流低下によっても起こりますが、今回はヘモグロビン欠乏による貧血についてお話しします。

貧血の診断は血液中のヘモグロビン(Hb)の濃度で貧血の有無を判断します。基準値は検査の機械などの違いにより多少異なりますが、当院では成人男性で Hbが13.5 g/dl未満、成人女性ではHbが11.5 g/dl未満なら、貧血があると考えています。Hbの値はほぼ赤血球の数と平行しますので通常は単純に赤血球が減った状態が貧血と考えていただいても結構です。赤血球は骨髄で毎日造血幹細胞から造られ、体の中をまわり、役目を果たすと壊され、次々と新しいものと入れ換わっています。平均寿命は120日といわれています。したがって、赤血球の破壊や出血に対して、造血が追いつかないときに、貧血となります。貧血の原因となる病気にはいろいろあります。再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病など造血幹細胞の障害によるもの、慢性腎不全、甲状腺機能低下症などエリスロポエチン(赤血球の造血ホルモン)低下によるもの、鉄欠乏性貧血、慢性関節リウマチ、ビタミンB12欠乏性貧血など赤血球への成熟障害によるもの、自己免疫性溶血性貧血、行軍ヘモグロビン尿症、細血管障害性溶血性貧血、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間血色素尿症など赤血球の破壊亢進によるものなどです。貧血はその原因によって治療法が違うので、その原因となる病気をつきとめる必要があります。

若年者の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血です。これは体内の鉄欠乏によってヘモグロビンが十分につくられないために起こる貧血です。例えば成長期、妊娠中や授乳中のため鉄需要に供給が追いつかないことにより、また月経出血で鉄分が失われることや、無理なダイエット、偏食により鉄分の摂取量が足らないことによって起こります。中高年者の貧血は、やはり大部分は鉄欠乏性貧血ですが、若年者の場合と違い、病的な慢性出血が原因となっていることが多いです。胃十二指腸潰瘍、痔核、子宮筋腫のような良性疾患から、胃癌、大腸癌、子宮癌、膀胱癌などの悪性疾患まで考えておかねばなりません。特に男性や、閉経後の女性の鉄欠乏性貧血は要注意です。貧血の原因となっている病気をつきとめておく必要があります。

中高年者の場合はさらに、全身性の感染、炎症、腫瘍といった慢性消耗性疾患に伴う続発性貧血であるこ 次項へともあります。これは、肺結核などの慢性感染症、慢性関節リウマチなどの膠原病、癌などから出血を伴わずに二次的に貧血が生じてくるものです。これは、造血に必要な鉄がうまく供給されなくなることなどが原因と考えられています。一方、胃粘膜の萎縮の強い人や、胃の全摘手術を受けた人は、ビタミンB12欠乏性貧血となることがあります。白血球や血小板の異常を伴う場合には、骨髄異形成症候群という造血幹細胞の病気かもしれません。また、自分の赤血球を溶かす異常蛋白ができてしまう自己免疫性溶血性貧血も、中高年に多い病気です。

貧血はいろいろな病気によって起こってきます。貧血と言われたら一度内科で精査をお受け下さい。

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