シリーズ病気 No.28 ネフローゼ症候群
内科(副部長) 大西 哲郎(おおにし てつろう)
人の体の臓器の中で大事なものの一つに腎臓があります。腎臓は左右に一つずつ2個あります。腎臓の中には糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる毛細血管の固まりのような組織があり、左右の腎臓に約100万個ずつあります。その糸球体は血液の中の老廃物や余分な水分をろ過し尿を作る働きをしています。ネフローゼになるとその糸球体が障害され、たくさんの蛋白が尿に排泄されてしまいます。このときに体に起こってくる病状をネフローゼ症候群と呼びます。
たくさんの蛋白が尿から出て行くため血液中の蛋白質が不足し、体のむくみ(下腿や顔面にまずみられるが高度になると全身にむくみが生じ胸水や腹水も生じることもある)、尿量の低下をきたします。血液の中に蛋白が不足している状態が続くと肝臓がそれを補おうとして蛋白を合成しはじめ、さらにコレステロールや中性脂肪などが蛋白と結合した「リポ蛋白」という物質も作ってしまうため血中のコレステロールが上昇する高脂血症という状態になります。また血の中の凝固機能(血を固まらせる機能)の異常も生じ、体の静脈や動脈に血栓(血の固まり)が生じやすくなります。
ネフローゼには大きく分けて、腎臓の糸球体そのものが障害され起きる一次性ネフローゼ症候群と、ほかの病気がもとで糸球体に病気が起こる二次性ネフローゼ症候群とに分けられます。二次性ネフローゼ症候群の原因には糖尿病腎症や、全身の血管や関節などに炎症を起こしてくる膠原病(代表的なものにループス腎炎などがある)が代表的なものですが他にもいろいろな原因でネフローゼが起こってきます。
診断には尿検査や血液検査も重要ですが、腎生検といって腎臓の細胞を細い針で採取して組織を顕微鏡で詳しく調べる検査も大事です。腎生検でネフローゼの原因、また糸球体の障害(どれだけ痛んでいるか)調べることが治療や予後(病気の経過とその見通し)判定に大変重要です。治療は安静と食事療法(塩分を控えめに、また肉類や魚類、牛乳などの良質の蛋白をとる)に加え、薬物療法として主にステロイド剤を用います。また、前述したようにネフローゼでは血液凝固能力の異常が見られる、つまり血が固まりやすくなっているため血を固まりにくくする薬(抗血小板剤や抗凝固剤)も併用されます。
注意すべきは以上の治療によりむくみがとれてきて症状が楽になってもネフローゼが完治したわけではないことです。尿検査や血液検査を参考にしながら治療を続ける必要があります。基本的にネフローゼは慢性の病気と言ってよく、また再発も起こり得る病気なので辛抱強い加療が必要なのです。
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