シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.31 白衣高血圧症

原 弘道(院長)(はら ひろみち)

健康診断などで血圧が高いということを指摘されて、多くの方が病院にこられます。高血圧かどうかという基準は、収縮期(上の)血圧が140mmHg以上か拡張期(下の)血圧が90mmHg以上とされています。高血圧を治療しなければならない理由は、この基準以上に血圧が高い人では、動脈硬化を基盤とする脳卒中や心筋梗塞などの病気を発症する率が高いためです。ところが、患者さんの血圧を測ってみると、確かに診察や健診では血圧が高いのに、家庭での血圧が高くないということがしばしばあります。

最近の研究では、家庭での血圧のほうが日常の血圧の平均値を反映しており、診察時の血圧に較べて、高血圧に起因する脳や心臓の臓器障害の発症に関連すると報告されています。血圧の数値は、常に一定ではなくストレスでも変動します。例えば会話であるとか運動、車の運転、排尿・排便などでも20―30mmHg 程度の一時的な血圧上昇がみられます。診察時に緊張されて血圧が上昇される方は稀ではありません。通常、家庭血圧は、外来診察時の血圧よりも低いことが一般的です。したがって家庭での高血圧の基準値は140/90mmHgよりも低くしなければなりません。家庭での高血圧の基準は135/80mmHgが目安と考えられています。

家庭での血圧測定は座って測るのが原則です。時間は朝食前と就寝前の2回など、一定の条件で測ってください。この血圧値は実際に降圧治療をする上で非常に参考になります。例えば外来では血圧が高く、家庭では130/80mmHg以下の正常血圧の人は、白衣高血圧と呼ばれますが、そのような人は日常生活でのストレス是正で経過をみます。糖尿病や腎臓疾患などの合併症がある場合には、降圧治療をすることもあります。白衣高血圧の方も将来真の高血圧に移行する可能性がありますので、定期的に血圧を監視する必要があります。 高血圧の治療の目的は、脳血管障害、心臓病、腎不全、動脈硬化など合併症を発生させ次頁へ ないことにあります。高血圧だけでは自覚症状がないことが多く、脳出血などの合併症が生命に危険を及ぼしますので、高血圧は「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。

高血圧治療の目標値は時代とともに変化し、より厳格なコントロールが求められてきていますが、高齢者では注意点も多く若・中年者に比べて高血圧のコントロールは難しい場合もあります。

このように最近では高血圧の治療には外来血圧のみならず家庭血圧にも基づいて行うことが勧められていますが、血圧が正しく測定されることと血圧値に一喜一憂しないことが重要です。内服薬(降圧剤)は自分勝手に調節しないで担当医の指示、指導に従って下さい。また、高血圧は遺伝的な体質とともに生活習慣(食生活、運動、労働、喫煙・飲酒など)が関連する病気ですので、定期的な受診だけでなく日常生活での自己管理も大切です。

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