シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.44 関節リウマチの新しい薬物療法

内科(副院長) 藤井 隆(ふじい たかし)

関節リウマチは全身性の炎症性疾患で、特に関節に慢性の炎症が起きて、関節が腫(は)れる、痛むなどの症状が現われます。とくに朝に関節の痛みやこわばりが自覚症状として現れるのが特徴的です。関節の炎症は持続すると、関節構造が破壊されて骨が変形し、日常生活が思うように出来なくなります。さらには車椅子や寝たきりを余儀なくされ介護が必要になってきます。その結果QOL(生活の質)低下とともに感染症、動脈硬化などの合併症にもなりやすく平均寿命は一般の方に比べ10歳くらい短いと言われています。また関節リウマチは関節以外にも肺、腎臓、血管などにも特有の病変を生じることがあり、これらが生命予後に重大な影響を与える場合があります。

関節リウマチは小児から高齢者にいたるあらゆる年齢で発病しますが30歳から60歳にかけてが発病し易い年齢です。男性に比べ女性の方が多く、日本人の有病率は0.6%との報告があり、わが国では約70万人ほどの患者数と推定されています。

関節リウマチの真の原因は不明ですが、その病態には自己免疫が関与し、それによる関節滑膜の炎症が関節(軟骨および骨)の破壊を生じると考えられています。関節リウマチは一旦発病すると自然に良くなることは少なく、多くは通常増悪と軽快を繰り返しながら進行性に経過します。最近の研究で、関節破壊は従来考えられていたよりも早く始まり発症から2年以内に急速に進行することが分かってきました。

そのため関節破壊を抑制するためには、単に関節の痛みを和らげる対症療法では不充分で、関節や全身の活動性炎症を鎮静化するために、発症初期から積極的に治療を開始することが重要です。

関節リウマチの薬物治療としては、鎮痛剤、抗リウマチ薬、免疫抑制剤、ステロイドホルモンなどが内服薬として使用されます。20年前に比べて使用できる薬剤の種類が多くなり薬物療法が進歩しましたが、抗リウマチ薬、免疫抑制剤の有効率は薬剤により20~60%で無効例も多く、反応性に個人差が大きいのが実態です。またステロイドホルモンは炎症を抑える効果は著明ですが減量・中止により悪化する場合もあり、また長期に服用せざるを得ない場合は、糖尿病、骨粗鬆症などの副作用が問題になってきます。

このように関節リウマチは治療に難渋することも多く難病とされてきましたが、近年免疫学研究の進歩により、関節炎の病態にサイトカインとよばれる物質が深く関連していることが明らかになりました。サイトカインは免疫に関与する細胞から作られ、多くの種類がありますが、関節リウマチでは炎症を促進するサイトカインが亢進しています。多数あるサイトカインのなかでもTNFαが注目され、このTNFαの働きを止める薬剤が開発されました。このTNFαを阻害する薬剤の治療効果は劇的で90%以上の人に効果が見られています。症状が軽快するだけでなく炎症の程度を反映する血液検査の数値(CRP)も速やかに低下し、この治療を長期継続することで関節破壊の進行を抑えてくれます。欧米では既に関節リウマチの主要な治療法となっていますが、現在日本でも使用が可能となりリウマチ診療専門施設で使用が広まってきています。この薬剤は内服薬と違って注射製剤で、点滴で投与する薬剤と皮下注射(自己注射)の薬剤との2種類があります。このTNF阻害治療薬は生物学的製剤ともよばれ、抗リウマチ薬で十分に症状が抑えられない活動性の関節リウマチの方に勧められますが、投与できない条件の方もありますので主治医の先生とご相談して下さい。

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