シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.48 冠動脈形成術の進歩

循環器科(部長) 松井 秀夫(まつい ひでお)

狭心症、心筋梗塞は心臓を栄養する血管である冠動脈が、動脈硬化などで狭窄・閉塞しておこる病気です。日頃の食事・運動療法をこころがけ予防することが重要ですが、病気がおこっているとき、症状をとり、心機能の悪化を防ぐためには、狭くなった、あるいは、閉塞した冠動脈を積極的に治療する必要があります。方法として、一般的な心臓の手術をして、別のルート(血管)を作るバイパス術とカテーテルを使った手術(冠動脈形成術)がありますが、今日は、循環器内科で盛んにおこなわれる冠動脈形成術についてお話ししたいと思います。

冠動脈形成術は約30年前に始まった治療で、当初は、バルーン(“風船”)で血管を拡張する方法でした。バイパス手術に比べ、体への負担、危険が低いメリットがありましたが、一番の弱点は3割から4割の確率で起こる、再狭窄でした。これは、手術終了時には十分(といっても、正常の冠動脈でもせいぜい直径3-4mmですが)広がっていても、数ヶ月の間に、場合によっては手術前より狭くなり閉塞するという問題でした。これを何とか防ごうと、約15年前よりステントという金網を狭くなった血管内で広げておいたままにしておくステント留置ができるようになり、幾分かは、再狭窄は減りましたが、依然として大きな問題でした。

最近、再狭窄予防型、あるいは“薬塗りのステント”というのを、新聞雑誌などで見られて方もおありかと思います。一種、抗ガン剤のような細胞分裂を阻止するような、かなり強力な薬をステントの表面に塗り込んで数ヶ月間、薬の効果を発揮するようにした新型のステントです。一昨年、日本でもやっと保険で正式に使えるようになりました。再狭窄率は、当初、“0”と言われましたが、さすがにそうでもないのですが、1割以下ぐらいの確率になってきています。いい面ばかりかというと、そうでもなく、ステントは、亜急性閉塞という金属にふれた血液が突然固まり、血栓をつくって血管が詰まるという重篤な合併症が、手術後2-4週間くらいの時期にあるのですが、新型のステントは、この時期が長く、当初より3ヶ月くらいはあぶないといわれていましたが、使い始めると、その時期を過ぎても、起こることがあり、まだ標準的ではありませんが、1年くらいはこの合併症を予防する薬を飲み続けるようにしている専門医も多くなってきています。さらにこの問題を難しくしているのが、この予防薬を飲んでいると、抜歯や、別の病気で大きな手術などをする必要が起こったときに薬を中止しないと手術ができないという事態になることが起こりえます。(たとえば、ガンが見つかるとかなど)このような新たな問題をかかえながらも、効果が明らかによいため、当院でも、再狭窄予防型ステントを使う率が増えてきています。

しかし、最も重要なのは、このような病気にならないように、食事・運動に気をつけ、禁煙し、肥満にならないよう、特に、糖尿病、高脂血症などを十分コントロールすることではないでしょうか。(治療費も、この新型ステントだけで、40万円近くかかります)
“私も今はやりの、メタボリックなんとかだ~”と変な自慢をするようなはめにならないように・・・

▲ ページの先頭へ戻る