シリーズ病気 No.49 そけいヘルニア(高齢者に多い脱腸)
外科(副院長) 荻野 信夫( おぎの のぶお)
“ヘルニア”とは「じゃまに出っ張っているもの」という意味です。整形外科で、お世話になる椎間板ヘルニアを思い浮かべる方が多いですが、足の付け根の筋肉のすき間(そけい部)からお腹の中の臓器(腸など)が外に飛び出し膨らむ状態を“そけいヘルニア”と呼びます。これは俗に「脱腸」とも呼ばれています。
1.症状
立ち上がったり、お腹に力を入れたりすると腸が出て、そけい部が膨らみます。通常は手で押さえるとお腹に戻ります。放置して年月がたつと徐々に脱出がひどくなり、精巣近くまで膨れてまるで信楽焼のオス狸の置物のようになります。また、すき間が狭くなって腸が出っぱなしになって戻らなくなる「かんとん」と呼ぶ状態になると、腸がうっ血して腐ることもあるので緊急手術が必要になり、手術の危険度も増します。
2.原因
小児期のそけいヘルニアの多くは生まれつきのものですが、成人のものはそけい部の筋肉組織が弱くなって生じます。また腹部に力がかかりやすい男性に多いと言われていますが女性にも少なくありません。
3.治療
昔からある脱腸帯(ヘルニアバンド)は腸を出ないように押さえこむだけで根本的な治療にはなりません。新生児、乳児期のそけいヘルニア以外は、自然治癒はないのでしっかりと治療するには手術しかありません。手術を焦る必要はないものの「かんとん」が起きないうちに治療をしておくことが大切です。
手術は足の付け根を5-6 cmほど切開してポリプロピレンとよぶ人工素材の糸を編んで作ったメッシュを使ってヘルニアの穴をふさぐ方法が主流ですが、当院ではお腹に3カ所の孔を開け、内視鏡を入れてモニターを見ながら腹壁の内側からメッシュを広くあててヘルニアの穴をふさぐ方法(腹腔鏡下そけいヘルニア手術)で良好な成績を上げています。この方法は傷が小さいため痛みも少なく、日常生活への復帰が他の手術方法に比べて短いというアンケート結果が得られました。入院期間はおおよそ一週間で、術後安静の必要もありません。
現在まで三百名以上の方がこの手術を受けられましたが、最近では術後のヘルニア再発はほとんどありません。ただし、全ての患者さんがこの手術を受けられるわけではありませんので詳しいことは外科を受診して専門医にご相談下さい。
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