シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.50 溶連菌感染症

小児科(部長) 片岡  知(かたおか さとる)
小児科 相本 瑞樹(あいもと みずき)

小さなお子さんをお持ちの方なら聞いたことがあるかもしれません。今回は、最近流行している“溶連菌感染症”についてお話ししたいと思います。

「そもそも溶連菌って何?」

正式名称は“溶血性連鎖球菌”と言います。
この菌は、血液のはいった培地で培養すると、溶血反応を示し、鎖のように連なって増える性質があることからそう呼ばれています。 人に対して病原性が強く、小児科で問題になるのがA群β(ベータ)と言う溶連菌です

「どんな症状が出るの?」

幼稚園から小学校低学年の小児では、咽頭・扁桃炎として発症することが多く、潜伏期間は2~5日です。最初はカゼの症状とよく似ていて、40℃前後の発熱と“のど”の痛みがあらわれ、咳や鼻水は少なく、時に頭痛、腹痛、嘔吐等がみられます。他に特徴的な所見として、“のど”の奥に出血斑を認めます。“イチゴ舌”と言われ、舌の表面がイチゴの様に赤くぶつぶつになることがあります。また、顔や体に小さな赤い発疹があらわれることもあります。無治療のまま放置すると、中耳炎、副鼻腔炎等を合併することがあります。また溶連菌は、膿皮症などの皮フの感染症の原因にもなります。

「どのように診断するの?」

血液検査をすると白血球が増え、CRP(炎症の数字)が上昇しています。ただしその他の細菌感染症でも同様に上昇するので、これだけでは確定診断にはなりません。溶連菌感染症で最も信頼できるのは培養検査です。これは“のど”を綿棒でこすり、付着した細菌を特殊な培地で菌を増殖させて調べます。ただし、この検査は結果が出るのに数日かかるのが弱点です。急性期の診断には溶連菌迅速診断法が有用です。これは培養検査と同様に“のど”を綿棒でこすって検査するのですが、わずか10分ほどで結果が出ます。その便利さから現在では多くの外来で、この迅速診断法を用いたキットが使われています。この検査は偽陽性(実際は菌がいないのに菌がいるという結果になること)はほとんどないのですが、偽陰性(実際には菌がいるのに菌がいないという結果になること)がたまにあります。このため検査が陰性となっても、溶連菌感染を100%否定できる訳ではなく、問診・症状・診察所見等から総合的に診断します。

「普通の風邪とどこが違うの?」

溶連菌に感染しても適切な治療を行えば、急性期の症状(一次症と言います)は、2~3日で良くなります。しかし、溶連菌感染症で気をつけなければならないのは、まれにではありますが、急性期の症状が治まっても数週間後に、急性糸球体腎炎・リウマチ熱やアレルギー性紫斑病などを続発することです(二次症と言います)。

急性糸球体腎炎は、肉眼的血尿(尿が赤くなる)・乏尿(尿が出にくくなる)・手足がむくみ、顔が腫れ、血圧が上昇します。はじめのうちは入院治療が必要で、水分や食事制限を行い、退院後も長期間、体育等の運動制限が必要になります。自覚症状に乏しく、検尿しないとわからない程度の血尿が主な症状となる、無症候性の急性糸球体腎炎も多くみられます。

リウマチ熱は、関節炎がおこりますが、いわゆるリウマチ(慢性関節リウマチ)とは別の病気で、心炎を伴い心臓弁膜症を発生させます。その他、皮下結節・輪状紅斑・舞踏病等が見られます。適切に治療されているせいか、現在日本ではあまり見かけない疾患となりました。

アレルギー性紫斑病は主に両足に紫斑が出現し、激しい腹痛、関節痛を認め、時に腎障害を合併します。

「どういうことに気をつけたらいいの?」

前述した通り、急性期の症状は抗菌薬を2~3日飲めば良くなりますが、完全に菌をなくすために、ペニシリン系の抗菌薬を10日間服用する必要があります。近年除菌効果の高いセフェム系抗生剤を5~7日間投与する方法も行われています。早期に抗菌薬を開始し、決められた日数服用すれば、急性糸球体腎炎・リウマチ熱などの発症率はかなり減ると言われています。

また溶連菌感染症と言われてから数週間は定期的に検尿するなど、続発症を早期に見つけることも必要です。

「溶連菌ってうつるの?兄弟が溶連菌になった場合は?」

一言で言えば、人から人にうつります。菌のまじった唾液が咳やくしゃみ、手や食器等を介して感染します。適切な抗菌薬を飲み始めて、約24時間以上たてば、人にうつす危険性はなくなります。ですから通常、発症後2~3日して元気になっていれば、登園・登校してもかまいません。

兄弟が溶連菌感染症と言われた場合、無症状の他の兄弟に予防的に抗菌薬を飲ませるかどうかについては確立した方針はありません。主治医とよく相談して下さい。

指示通り薬を飲んでも再発する場合は、完全に除菌されていないか、家族内に健康な保菌者がいないかを検討する必要があります。いずれにしても頻回に再発する場合は、扁桃摘出を考え耳鼻科でも診てもらうことになります。

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