シリーズ病気 No.54 メタボリック シンドローム
内科(副 部長) 窪田 剛(くぼた つよし)
はじめに
日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中ですが、心臓病と脳卒中を合わせた循環器病を引き起こす原因は「動脈硬化」です。「動脈硬化」の危険因子といえばコレステロールが有名ですが、最近の研究では、肥満(特に内臓のまわりに付着した脂肪)がさまざまな生活習慣病を引き起こし、より「動脈硬化」になりやすいことがわかってきました。そのキーワードとなるのが最近マスコミでも取り上げることが多くなった『メタボリックシンドローム』です。
肥満症や高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、それぞれが独立した別の病気ではなく、肥満【特に内臓に脂肪が蓄積した肥満(内臓脂肪型肥満といいます)】が原因であることがわかってきました。
このように、内臓脂肪型肥満によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態を『メタボリックシンドローム』といい、治療の対象として考えられるようになってきました。
内臓脂肪型肥満とは?
体のどの部分に脂肪がつくかによって、肥満は2つのタイプに分かれます。
下腹部、腰のまわり、太もも、おしりのまわりの皮下に脂肪が蓄積するタイプを「皮下脂肪型肥満」、内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプを「内臓脂肪型肥満」と呼びます。体形からそれぞれ「洋ナシ型肥満」「リンゴ型肥満」とも呼ばれています。
この2つのタイプのうち、「皮下脂肪型肥満」は外見から明らかにわかりやすいですが、「内臓脂肪型肥満」は外見ではわからないことがあります。内臓脂肪型肥満を簡単に調べる方法として、ウエスト径(へそまわり径)が男性では85cm以上、女性では90cm以上であれば、内臓脂肪型肥満が疑われます。これは肥満というより「肥満症」と考えた方が良いかもしれません。
危険因子が増えるほど、危険度は加速する!
『メタボリック シンドローム』の人は、動脈硬化の危険因子である「肥満症」、「高血圧」、「糖尿病」、「高脂血症」を重複して発症していることがあります。最近の研究で、これら危険因子の重複により動脈硬化のリスクが高くなることがわかってきました。
日本の企業労働者12万人を対象とした調査では、軽症であっても「肥満(高BMI)」、「高血圧」、「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を2つ持つ人はまったく持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3~4つ併せ持つ人ではなんと 31倍にもなることがわかりました。
このように、たとえ異常の程度は軽くても複数の危険因子が重複しているケースでは、動脈硬化が起きやすいのです。
メタボリック シンドロームの診断基準
本邦におけるメタボリック・シンドロームの診断基準では、内臓脂肪の蓄積が必須条件と位置づけられ、他の3つの項目のうち2つ以上を満たしている場合に「メタボリック・シンドローム」と診断します。
具体的には、内臓脂肪の蓄積はウエスト径で判定し、男性85cm以上、女性90cm以上を基準値としています。この数字は、腹部CT画像で精密に内臓脂肪を測定した場合、断面積100cm²に相当します。その他の項目の基準値は、表のとおりです。
ウエスト径の正しい測り方はへそまわりを測ることです。腰の一番細いところではないので、気をつけて下さい。
| 必須項目 | ウエスト周囲径 | 男性85cm以上 女性90cm以上 |
||
| 選択項目 | 血清脂質異常 | トリグリセリド値 HDLコレステロール値 |
150mg/dL以上 40mg/dL未満 |
のいずれか、または両方 |
| 血圧高値 | 最大血圧 最小血圧 |
130mmHg以上 85mmHg以上 |
のいずれか、または両方 | |
| 高血糖 | 空腹時血糖値 | 110mg/dL以上 | ||
メタボリック シンドロームを改善するためには?
メタボリック シンドロームは生活習慣が密接に関係しているので、生活習慣をちょっと改善するだけで、内臓脂肪を減らし、しいては動脈硬化疾患を予防することができます。
こんな生活をしていませんか?まずはあなたの生活習慣をふり返ってみましょう。
- 食事は満腹になるまで食べる
- 間食をよく取る
- 料理に砂糖をよく使う
- 濃い味付けが好き
- 緑黄色野菜をあまり食べない
- アイスクリームを好んで食べる
- 普段から階段を使うことが少なく、エレベーターなどに乗ってしまう
- 運動の習慣がない
- ストレス解消にお酒を飲むことが多い
- タバコを吸っている
日常の食習慣・運動習慣・嗜好を簡単なところから見直してみましょう。
ウエスト径を減らすために…
1.高脂肪・高ショ糖・高カロリー・低繊維食に注意。
内臓脂肪がたまりやすい食事は、高脂肪食(脂っこいもの)、高ショ糖食(甘いもの)、高カロリー食(カロリーが高いもの、食べ過ぎ)、低繊維食(緑黄色野菜の不足)です。また、濃い味付けは塩分を摂りすぎるだけでなく、食欲をそそり、食べ過ぎを招きます。バランスの良い食事と腹八分目。これがメタボリックシンドロームにならない秘訣です。
2.アルコールもほどほどに。
「百薬の長」とも呼ばれるアルコールですが、脂肪に変わりやすいのでとり過ぎは禁物です。また、おつまみには高カロリーのものが多いので、おつまみの品を工夫し、食べ過ぎに注意しましょう。
3.運動は内臓脂肪を減らすのに一番有効な方法。
でも気負って「運動するぞ!」と決心しても、ついついさぼりがち。運動を毎日のライフスタイルに組み込むと、案外簡単に実行することができます。会社勤めの方なら通勤の行き帰りに、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う、バス停一つ分歩いてみる。こんなところから始めてみましょう。
厚生労働省の「健康日本21」によると、健康維持に最適な運動消費カロリーは1週間で2,000kcal、1日あたり約300kcalといわれています。
体重60kgの人が時速4km(やや早歩き)のペースで、歩幅70cmで10分間歩く(700m、1000歩)ときの消費エネルギーは約30kcalになります。1日300kcalを消費するには、1日で1万歩を歩けばいいわけです。これでしたら、毎日の通勤でクリアできると思いませんか。
また、専業主婦でも室内用自転車などを利用すれば、家にいながらテレビを見ながらでも運動することができます。
1時間のテレビ番組を、ただ座って見ているだけではカロリーはほとんど消費されません。一方、テレビを見ながら自転車を1時間こいだ場合、約300kcalのカロリーを消費することができます。
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