シリーズ病気 No.56 肥満と肝機能障害
内科(院長) 原 弘道(はら ひろみち)
本邦では、肥満人口(BMIが25以上)は男1300万人、女1000万人とされ、高頻度に脂肪肝を伴っていることが知られるようになっています。脂肪肝は、肝臓に多くの中性脂肪が沈着した病態で、生活習慣での飽食とも関連していると考えられます。従来、常習飲酒家(日本酒換算で1日3合、5年以上)では、アルコール性肝障害としてアルコール性脂肪肝が知られ、さらにアルコール性肝炎、肝硬変への移行がよく知られています。ところが、飲酒暦のない脂肪肝は、「進行することのない予後の悪くない病気」であるとして、あまり関心を呼ぶことはありませんでしたが、近年このような考え方は間違いであるとされるようになりました。
肝障害を引き起こす程度のアルコールの摂取暦が無いにも関わらず、アルコール性肝障害と類似の肝臓への脂肪沈着を認め、脂肪肝、脂肪肝炎、肝硬変を呈する疾患群があきらかにされました。これらは非アルコール性脂肪性肝疾患と呼ばれており、肥満や糖尿病とも関連していることがわかってきています。またこの中で肝硬変、肝臓がんへ進展する病態は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といわれるようになり注目されています。最近、内臓脂肪蓄積を必須とするメタボリックシンドロームと呼ばれる病態が明らかにされ、心血管病の動脈硬化性の病気を引き起こしやすいとして注目されていますが、メタボリックシンドロームでの内臓脂肪蓄積の表現として、脂肪肝が相当するのでないかといわれています
臨床的にはこのような脂肪性肝疾患は、肝機能検査で血液のGOT、GPT、γ-GTPの上昇が見られ、画像診断像においては、腹部超音波検査で肝臓が高輝度の所見であるとか、腹部CT検査での肝臓の低吸収値で診断されることが多い。実際に人間ドックなどの健診でもこのような検査結果を呈する人がかなりの割合で見られています。しかも自覚症状が殆どないというのが特徴です。健診で肥満と肝機能異常を同時に指摘された場合は、脂肪肝の可能性が推測されます。この中で肝硬変などへの進行性の病気である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)であるかどうかは、正確には肝生検によるによる組織診断が必要ですが、かなりの数の患者がいるのではないか推定されています。
本邦では、肥満人口(BMIが25以上)が増加しつつあり、高頻度に非アルコール性脂肪肝を伴っているとされている。つまり肥満が非アルコール性脂肪性肝疾患、更には非アルコール性脂肪性肝炎の進展と密接に関連していることが推定され、肥満自体が慢性肝疾患への進展に深く関わっていると考えられるようになっています。肥満は、過剰栄養、運動不足など生活習慣に起因しています。人類の歴史は飢餓との戦いであり、余剰の摂取したエネルギーを脂肪として貯蔵する仕組みは、人類の生存に有利に働いていたと思いますが、飽食の現代では逆にその仕組みが生活習慣病の多くの原因になっているようです。肥満への適切な対処が多くの病気の予防となるように思います。
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