シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.59 白内障

眼科(部長) 妙中 直子

眼球の構造はよくカメラに例えられます。眼内(カメラ)に入ってくる光を水晶体(レンズ)で屈折させ網膜(フィルム)に像を写しています。水晶体は屈折の働きのほか、焦点を自動的に合わせる(ピント)を調節する役割をもっています。年をとってくると、水晶体の透明性が失われ濁った部分ができてしまいます。このように老化現象によって水晶体が濁ってくる状態が「加齢性白内障」とよばれる病気です。水晶体が濁ると、光がよく通らなくなり網膜に鮮明な像が結べなくなることにより視力低下をきたします。
白内障の原因は加齢だけでなく、糖尿病、アトピー性皮膚炎、薬物(ステロイド剤など)、放射線、他の眼疾患に伴うもの(ブドウ膜炎、眼の手術の既往)、眼外傷(眼のけが)などがあります。そのほかにも生まれつきの異常で白内障をもって生まれてくる先天性白内障の場合もあります。
初期の白内障では水晶体の濁りが一部分にしか存在しないため、外からの光が濁っていない部分を通過して目のなかに入ることができるため、ほとんど症状がないか、少し濁って見える程度の軽い症状を自覚するだけです。
水晶体の濁りが強くなってくると、光が眼内に入りにくくなってくるため、『かすみ』や『視力低下』を自覚します。また、水晶体が濁ると、光が濁りにぶつかって乱反射するため、日中の強い日差しや、夜の運転での対向車のヘッドライトが『まぶしい』と感じます。
他に白内障を疑う症状としては、『眼鏡があわなくなる』、『ものが2重、3重に見える』などがあります。

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白内障の治療は日常生活に支障がない程度であれば、点眼薬や内服薬により白内障の進行を遅らせます。しかし、これらの薬剤は、ある程度水晶体が濁るスピードを遅くするもので、症状や視力を改善させることはできません。 白内障が進行して、日常生活に不自由を感じるようであれば、手術を行います。手術の時期は、手術を希望される時期が最適な手術の時期と考えられます。一般的には50~60代の患者様では、まぶしさが強く運転などに不自由を感じる時点、運転免許更新のために0.7以下の視力になった場合など比較的早期に手術をされることが多いようです。高齢の患者様では0.3程度まで視力が低下しても日常生活に支障がきたさない場合もありますが、白内障のタイプによっては進行しすぎると手術が難しくなることもあるので手術の時期は眼科医に相談することをお勧めします。 白内障手術の利点としては、視力の回復が得られることのほか、眼内レンズの度数を調整することでメガネの度数を変えられることがあります。特に、近眼の強い方は眼内レンズを遠くに合わせることで近視を治すことができます。 最近の白内障手術は、医療技術が進歩したため痛みが非常に少なく安全で手術時間も短くなっています。(目の状態によっては手術時間が長くかかる場合もあります。) 手術は局所麻酔で行います。眼球に3~4mmの切開を作製し、水晶体の表の膜(前嚢)を丸く切り取り、袋の中の濁った水晶体の核を超音波で砕いて取り出します(超音波水晶体乳化吸引術)。現在では、ほとんどが超音波でとりだすことができますが、白内障が進行して非常に硬くなっている場合には、水晶体を丸ごと取り出すこともあります(水晶体嚢外摘出術)。残した袋(後嚢)の中に人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入します。眼内レンズは直径6mm程で後嚢に固定するためにループがついており、一旦挿入すれば取り替える必要はありません。 白内障手術は一般には、手術後の管理も含めて3~4日ほど入院します。患者さんの全身状態や手術後の頻回通院に問題がなければ日帰り手術を実施している施設もありますが、身体の病気をもっておられる患者様や高齢の患者様は安全を考え入院での手術をお勧めします。

手術の後はほとんどの方はメガネが必要になってきます。眼内レンズではピントを合わせる調節力はありませんので、例えば遠くがよく見える眼内レンズの度数にすると、近くを見るときには老眼鏡が必要となります。逆に近くがよく見える眼内レンズの度数にすると、遠くを見るにはメガネが必要となります。また、術後数週~数年してレンズを固定している水晶体嚢が混濁することによって生じる後発白内障により視力が低下してくることがあります。後発白内障は外来でのレーザー治療により水晶体嚢を破ることで比較的簡単に視力の回復が得られますので心配はいりません。  白内障が疑われる症状がありましたら、眼科専門医の受診をお勧めします。当院では現在、期日指定の入院での手術をおこなっています。入院期間は原則片眼で4日間、両眼で9日間ですが、患者様のご希望に応じて、短期あるいは長期間の入院にも対応させて頂いておりますので御気軽にご相談ください。

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