シリーズ病気 No.60 高血糖と合併症
内 科(顧問) 星 充
健康な人では75gぶどう糖負荷試験をすると空腹時血糖は120㎎/dl以下で、2時間値も200㎎/dlを超えることはありません。このような人で血糖の日内変動をみますと朝、昼、夕の食事毎に低い山を示します(図A)。ぶどう糖負荷試験で空腹時血糖が120㎎/dl以下でも、2時間値が120-200㎎/dlの人では、多めの食事の時だけ食後血糖が200㎎/dlの人では多めの食事の時だけ食後血糖が200㎎/dlを超えるようです(図B)。2時間値が200㎎/dlを超える人では各食毎に血糖は200㎎/dlを超えますが、食後時間がたてば120-200㎎/dlの範囲におさまります(図C)。空腹時血糖が120-140㎎/dlの人で2時間値が140-200㎎/dlの人では1日の血糖の推移は120-200㎎/dlの間におさまりますが、多めの食事の後では血糖は200㎎/dlを超えてしまいます(図D)。空腹時血糖が120-140㎎/dlでも、負荷試験2時間値が200㎎/dlを超える人では1日24時間のうち17~19時間の血糖値は200㎎/dlを超え、1日の大半が高血糖にさらされることになります(図E)。空腹時血糖が200㎎/dlを超え、これは当然のことですが負荷2時間値が200㎎/dlを超える人では1日の大半を200㎎/dl以上のかなり高血糖にさらされます(図F)。このように空腹時血糖が140㎎/dlを超え、負荷2時間値が200㎎/dl越えると1日の大半が200㎎/dlを超えて、将来合併症が発症する可能性が高まることがわかります。
血糖とは血液のぶどう糖のことで、ぶどう糖には体内の蛋白と結合し糖化(グリケーション)反応を起こす作用があります。臨床検査で高血糖が疑われる時に血糖とHbA1cを測定しますが、HbA1cは赤血球の中にあるヘモグロビン(Hb)がグリケーションを起こした程度をパーセント(%)で示すものです。正常範囲は4.3-5.8%ですが、このグリケーションの状態は強固で赤血球の寿命(平均120日)がつきるまで持続するため、HbA1cをみれば過去にさかのぼって1-2ヶ月前からの平均血糖値を知ることができます。随時血糖が正常範囲(70-110㎎/dl)でもHbA1cが高ければコントロールの状態は決して良好でないと判断できます。
HbA1cは赤血球の02解離能を低下させるためHbA1cが高値であれば、全身の組織へのO2供給は低下し、O2欠乏状態になるので、組織障害が徐々に起こってきます。糖尿病に特異的な合併症と言われる細小血管症(神経障害、網膜症、腎症)は血糖のコントロールが悪いまま持続すると5年、10年、15年の経過で神経障害、網膜症、腎症の順に発症することが知られています(図4)。
合併症の発症や進展は何もHbA1cの影響だけで起こる訳ではありませんが、身近なデータを参考にする立場からはHbA1cは大変有用な検査です。
近年、膵β細胞、脂肪細胞、骨格筋、肝臓、脳などで血糖値に影響するさまざまなメカニズムが解明されて来ていますので、今後高血糖による悪影響の解釈や対策もいろいろと提案されて、生命を維持する上で大切な血糖の適正な状態の保持について議論が進むことが期待されます。