シリーズ病気 No.61 医療被ばくと妊娠
放射線科(部長) 大西 卓也
X線検査を受けてから妊娠にきづかれてドキッとされた方もいらっしゃると思います。
結論から言うと被ばく量の多い特殊検査でないかぎり人工妊娠中絶をする必要はありません。
被ばくによる影響には確定的影響と確率的影響があります。
確定的影響とは影響の現れる最低の線量(しきい線量)が存在する影響で、胎児に対する影響には死亡(流産)、奇形、精神発達遅延があります。
確率的影響とは、しきい線量が存在せず、線量が増加するにつれて発生率が増加する影響で、発がん、遺伝的影響です。
通常のX線検査では、しきい線量を越えることはありませんし、医療被ばくが原因で発生するがんや遺伝的影響は自然発生(医療被ばく以外の原因)に比べて低い確率です。
胎児に対する影響は被ばくそのものより、被ばくを受けたことによる、母体の精神的ショックによる影響の方がはるかに大きいと考えられます。
精神的な影響を考えると胎児が被ばくする可能性のある下腹部の検査(上部消化管検査も含む)は妊娠の可能性のある時期を避けるべきです。すなわち、妊娠していないのが確実な時期である月経開始から10日以内に実施すべきです。これを10日規則といいます。もちろん、急を要する検査や下腹部が直接被ばくしない検査はこの限りではありません。
国際放射線防御委員会(ICRP)によると主だったX線検査による胎児被ばく線量(mGy)は
胸部CT 0.06以下 胸部単純撮影 0.01以下 上部消化管撮影 1.1
腹部CT 8.0 腹部単純撮影 1.4 注腸 6.8
骨盤部CT 25.0 腰椎単純撮影 1.7
で、100mGy以下の胎児被ばくは人工妊娠中絶の理由にならないと勧告しています。
