シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.64 喘息はこわい

内 科(副部長) 高井 博司


2007年の今でも、気管支喘息(以下、喘息と略す)という病気で、日本国内だけでも、年間約2000人のひとがお亡くなりになっています。つまり、喘息という病気は、今尚、治療を誤れば死ぬ病気だということを、まず知ってもらいたいのです。
喘息が、なぜこわいかというと、それは肺の中にある空気の通り道が腫れて狭くなり、息ができなくなる、つまり窒息してしまうからです。そして、この空気の通り道の腫れは、それを長く放置しておくと、薬を使ってもなかなか腫れがひかなくなる。これがこわいのです。どんな名医といえども、簡単に、その苦しさをとってあげられないことがあるわけです。
最近の喘息の治療で、世界的に最も推奨されている薬は、「吸入ステロイド」といって、飲み薬ではなく、「粉を吸い込むタイプ」の薬です。この薬は日本ではまだ歴史が浅く、発売されるようになってから10年経つか経たないかです。したがって、ずいぶん昔から喘息を患われているひとにとっては見慣れない薬でしょう。でも、この薬の良いところは、飲み薬と違い、口から吸い込むことで「ちゃんと肺だけに薬がたどりついて効果をあらわすこと」です。ときどき、喉が嗄れたりすることがありますが、ちゃんとうがいをすれば大丈夫です。このタイプの薬はたいてい朝・晩と使うので、処方する医師によっては、洗面所に薬を置いておいて、朝晩の歯磨きの前に吸うようにしてください、と指導されることもあります。
ところで、もっとも良くない治療は、メプチンの「シュッ」とひとふきする薬を日に、そして月に何度も使ってしまうことです。このメプチンに頼りきって、吸入ステロイドを使わずにいると、メプチンを使う量がどんどん多くなって、しまいにはメプチンを使っても発作や息苦しさがおさまらなくなってしまいます。メプチンはあくまで「最終兵器」としてとっておかないと、ほんとうに苦しい時に、もう武器がなくなってしまう、つまり、窒息の苦しさを解除してくれる薬が無い、というほんとうにこわい事態になってしまいます。
それともうひとつ、喘息のこわいところは、似た症状の病気がほかにもたくさんある、ということです。わかりやすくいうと、ヒューヒュー、ゼーゼーいう病気は、喘息だけではない、ということです。仮に、前から喘息をもっている患者さんでも、正しい喘息の治療をしているのに、なかなか症状が良くならない時は「これってほんとうに喘息か?」といつも考えなくてはなりません。喘息だと信じ込んで、喘息の治療だけを続けていると、あとでとりかえしがつかなくなることがあります。したがって、喘息の患者さんは、ヒューヒュー・ゼーゼーがなかなか治らないときは、なるべく早く医師の診察を受けて、それがほんとうに喘息だけによるものなのかを常にチェックしてもらうようにしてください。ときどき、喘息以外の、たとえば心臓の具合が悪くなってきた時などに起こる病気が潜んでいたりしますので、注意が必要です。

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