シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.65 胃癌

外 科 生島 裕文


1  胃癌の疫学
胃癌の死亡率は2004年現在、男性第2位、女性第1位と日本人に最も多く発症する癌の一つとされてきましたが、1960年代以降胃癌の死亡率は減少傾向にあります。死亡率の減少の要因として、1.集団検診の普及、2.診断技術の進歩、3.食生活の欧米化、4.手術手技の向上、5.化学療法の進歩等が挙げられております。

2  胃癌の病期
病期とは、癌の進行の程度を示す言葉で、胃癌ではI期(IA、IB)、II期、III期(IIIA、IIIB)、IV期に分類されます。病期は、癌が胃の壁の中のどのくらい深くもぐっているか(深達度)、リンパ節や他の臓器への転移があるかとうかによって決まります。胃癌術後の病期別の5年生存率は、IA期93.4%、IB期87.0%、II期68.3%、IIIA期50.1%、IIIB期30.8%、IV期16.6% (1991年日本胃癌学会全国登録)と、病期別で生存率に大きな差があり、早期発見がいかに大切であるかがわかります。早期の胃癌患者のほとんどは、「偶然に」検診で発見され、自覚症状が全くない方々です。40歳以上の男女ともに、年に1回は胃癌検診を受けてください。

3  胃癌の病期別治療法
日本胃癌学会の胃癌治療ガイドラインに沿って、病期別治療法について説明します。
IA期 
胃壁の表層(粘膜)にとどまる癌の場合、内視鏡(胃カメラ)を用いて、胃の粘膜を部分的に切除します。胃を切らないので、胃の機能は完全に温存されます。ただし大きさ、形(潰瘍の有無)、発生部位、癌のタイプ(組織型)により細かく限定されており、たとえIA期であっても、必ずしも胃カメラ治療の適応とはならないというのが現状です。
IA(粘膜癌以外)、IB期
リンパ節郭清を含めた外科的治療(手術による胃切除術)が適応となります。手術方法には、1.大きくおなかを切る開腹手術と、2.傷の小さい腹腔鏡手術があります。大きさ、発生部位、体型により限定されますが、昨年王監督が施行され話題となった、腹腔鏡による胃切除の適応となる場合があります。腹腔鏡手術とは、おなかの中にカメラを挿入し、おなかの中をテレビに映しながら、テレビを見て手術を行う方法です。腹腔鏡手術の利点として、傷が小さいため、術後の痛みが軽く、回復が早い点が挙げられます。以前腹腔鏡手術は、大学病院等の大きな病院でしか受けれないという特殊なイメージがありましたが、日本で腹腔鏡手術が最初に導入されてから15年経過しており、充分な腹腔鏡手術のトレーニングを受けた外科医も多くなり、現在では腹腔鏡下の胃切除術は標準術式となりつつあります。
II、IIIA、IIIB期
開腹による胃切除(胃全摘出あるいは胃2/3切除)
IV期
IV期は既に肝臓や肺などに遠隔転移をきたしてしまっている病期です。出血をしている場合や食物の通り道が完全に塞がっている場合は、やむなく手術を施行せざるを得ないのですが、それ以外は、抗癌剤治療が第一選択となります。近年の抗癌剤の進歩はめまぐるしく、抗癌剤治療で、腫瘍が著明に小さくなり、手術可能となる場合もあります。抗癌剤治療は原則的には入院の必要はなく、外来通院で治療させていただきます。

最後に
いずれにせよ早期発見が最重要であるのはいうまでもありません。
定期的に胃癌検診(バリウム検査または胃カメラ検査)を受けるようにしてください。


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