シリーズ病気 No.67 マイコプラズマ感染症について
小児科医長 守脇孝成(もりわき こうせい)
皆さんはマイコプラズマという言葉を聞いたことがありますか?マイコプラズマはウイルスにも細菌にも分類されない特殊な病原体です。発熱、咳が続き、医師から「マイコプラズマ肺炎でしょう」と説明を受けた経験がありませんか?マイコプラズマには何種類かのタイプあります。ヒトから分離されるマイコプラズマは14種類が知られていますが、そのうち病原性が確定されているのは4種類です。ただし、実際の臨床の場で病気として問題になるのは、まず肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)だけです。今回はその肺炎マイコプラズマについてお話しします。
肺炎マイコプラズマの好発年齢は6歳以上の学童児です。もちろん1-2歳でもたまに罹ります。乳幼児だから肺炎マイコプラズマの可能性は低いと決めつけて診療していると、その低い確率に足下をすくわれる経験をします。肺炎マイコプラズマの感染経路は飛沫感染で、咳やくしゃみにより人から人へと伝染します。感染してから発症するまでの潜伏期間は約2~3週間です。兄弟例では、一人が治って落ち着いたかと思うと、忘れた頃にもう一人が始まった、という感覚です。流行の季節は秋から冬で、4年のサイクルで(オリンピック年)周期的に流行を繰り返すと言われていますが、最近は毎年かつ通年性に小流行がある印象です。症状は発熱と咳(乾いた咳で夜間に多い)で、いわゆる風邪症状です。我々が聴診しても肺炎の音が聞こえないのが特徴です。風邪にしては症状が続くため、レントゲンを撮ってみると驚くほど真っ白な肺炎像(スリガラス様といわれる)が認められます。一般的でないという意味で異型肺炎と呼ばれます。
診断はペニシリン系やセフェム系の抗生物質が効かない経過、聴診所見が正常であるにもかかわらずスリガラス様の肺炎画像が認められれば、ほぼ可能です。診断を確定するには、血液抗体価の測定と喀痰培養検査があります。抗体価は発症から一週間ぐらいで上昇し始めるため、治り際の二度目の採血で陽性だと分かることも多くあります。それでは不便だということで、発症の早期から上昇する抗体を見つけ出す迅速診断キットもありますが、今はまだ信頼性に乏しい検査です。培養検査は喀痰を特殊な培地に採り、肺炎マイコプラズマの存在を1~2週間かけて証明するものです。外来診察では実用的ではありません。結局は年齢と臨床症状と経過で肺炎マイコプラズマを疑って、疑いのまま治療を開始するというのが実情です。
その肺炎マイコプラズマの治療には、マクロライド系の抗生物質(商品名、クラリス、クラリシッド、ミオカマイシン、エリスロシン、ジスロマックなど)が使用されます。これらの薬には苦みがあり、内服を嫌がるお子さんも多いでしょう。一般に他疾患で使用されるペニシリン系やセフェム系の抗生物質は、味が良くてもマイコプラズマには無効のため、なんとか内服してもらわなければなりません。しかし、最近ではどんなに苦いマクロライド系抗生物質を飲んでも、その効果が無い耐性株が増えてきました(5-6%)。頑張って内服したにも関わらず、効果がありません。そのときは第二選択のテトラサイクリン系抗生物質(商品名、ミノマイシン)を使用することもあります。ミノマイシンはまず100%の効果があります。100%効果的でもこれを第一選択としない理由は、乳幼児で黄色歯や肝障害などの副作用がでる可能性があるからです。
マイコプラズマに感染しても、すべての人が肺炎になるわけではありません。比較的軽症に経過し、風邪のように自然に治ることもあります。しかし、小児では重症例や合併症も多く経験します。抗生物質を内服すれば早く治すことができ、合併症のリスクも減ります。長引く咳があるときは受診をお勧めします。その際は、今飲んでいる薬の名前が分かれば診断のヒントになりなすので、ぜひ持参してください。
▲ ページの先頭へ戻る
