シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.71 膵癌

消化器外科部長 林部 章 (はやしべ あきら)

はじめに
本邦において、膵癌は年々増える傾向にあり、男性のがん死亡原因の第5位、女性では第6位となっています。全体では、年間約2万人が膵癌で死亡しています。膵癌は他の癌と比較して、診断されてから、死亡するまでの期間が短く、治療の困難な癌の一つです。

膵癌の危険因子
年齢(50歳以上)、性別(男性は女性の1.3倍)、人種(黒人は白人の1.5倍)、喫煙(喫煙者は非喫煙者の約2倍)、その他慢性膵炎、糖尿病などが危険因子といわれています。

膵癌の症状
腹痛(40%)、黄疸(15%)、背部痛、体重減少などがありますが、全体の18%は無症状であり、症状だけでは膵癌を早い時期に特定することはできません。

診断
血液検査(アミラーゼやエラスターゼ1というような膵臓から分泌される消化酵素が上昇することがあります)、腫瘍マーカー(膵癌で上昇する腫瘍マーカーにはCEA、CA19-9、Dupan-2, Span-1などがあります)、腹部超音波検査、腹部CT・MRI検査などは外来にて簡便に実施できる検査です。膵癌が疑われる場合には、入院のうえで内視鏡的膵管造影、超音波内視鏡検査(穿刺による組織生検を含む)などのより侵襲的な検査も必要になります。

治療
膵癌の治療方針は、癌の進行具合によって決められます。他臓器転移(肝転移、肺転移など)や腹膜への転移、腹腔動脈・上腸間膜動脈への浸潤、大動脈周囲リンパ節転移が認められない場合には、手術的治療が考慮されます。すなわち、手術的治療は、癌細胞を残さずに切除可能と判断される症例に適応となります。一方、膵切除を施行しても、明らかに癌が残ってしまうと予想されるケースでは、手術的治療の効果がないものと考えられ、手術以外の治療を選択します。手術以外の治療法としては、化学療法(抗癌剤による治療で、ジェムザールという注射薬やティーエスワンという経口薬などを使います)や放射線治療、あるいはその併用療法があります。

おわりに
膵癌の治療成績は明らかに向上しています、それは外科的治療の進歩と有効な抗癌剤の開発(ジェムザール)などによるものです。しかしながら、膵癌はその切除例においても5年生存率15%程度といまだに予後不良な疾患であり、早期発見、早期治療が重要であることは言うまでもありません。早期診断のうえで、安全確実な手術(手術による死亡は2%以下と近年急速に減少しており、膵臓外科専門医のいる施設において手術をうけることが肝要)、さらに術後補助化学療法を含めたより専門的なフォローアップをうけることが大切です。

 

 

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