シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.73 眼瞼下垂

皮膚科部長 中川 浩一 (なかがわ こういち)

まず、下の写真を見てください。矢印が入っているので、すぐにわかるでしょう。上まぶたが、少したれています。医学用語で、眼瞼下垂と呼ばれている状態です。



先天的に、生じることもありますが、たいていは加齢変化として起こってきます。つまり、中年以降の男女に多く見られるものです。じゃあ、老化現象として、放置していいものかというと、そうではないのです。 実は、去る、4月2日、皆様方の多くもご存知と思いますが、あのNHKの『試して合点で』取り上げられました。放送の中で、ある中年の女性が眼瞼下垂のために、いろいろな身体症状に悩まされた後、眼瞼下垂の手術を受けたことで、元の元気な生活を取り戻せたというエピソードをあげています。


内容の一部 54歳になるAさんは、肩こり、背中のこり、頭痛、めまい、疲れやすい、不眠、などの深刻な症状に悩んでいました。はじめのうちは更年期のせいだとあきらめていましたが、症状の悪化に伴い診察を受けたところ、原因はなんと“顔のたるみ”にあると診断されたのです。 医師から説明を受けた後も半信半疑でしたが、悩んだ末に思い切って手術を受けてみました。すると手術を受けた日の夕方には、鉄板のようになっていた背中がウソのように軽くなっていることに気がつきました。さらに、不眠、疲れやすいなどの症状も次々と改善し、それまであきらめていたスポーツや楽器演奏などの趣味が再開できるようになったのです。

つまり、眼瞼下垂は、単に美容的な問題ではなく、体全体にいろいろな症状を引き起こす原因となります。その理由は以下のようなものです。
まぶたを上げ下げするには、眼輪筋と眼瞼挙筋、そしてミュラー筋という3つの筋肉が働きます(下の絵の中に示します)。ところが、加齢とともに、これらの筋肉の働きが弱くなってきます。そうすると、今度は、おでこの筋肉(前頭筋)まであわせて使わないと、まぶたを大きく開けることができません。さらに、これらだけで不十分になると、肩の筋肉まで動員する必要がでてきます。これらの筋肉の緊張状態が続くことで、頭痛や肩こりがおきるのです。



ただし、見た目に眼瞼下垂があっても、上で述べたような、肩こり、頭痛、腰痛などがまったくない方もおられます。このような方は何も心配ないのですが、日常生活に支障をきたすような方には手術をお勧めします。
手術は、①余剰になった眼瞼皮膚と眼輪筋の一部を切除する、②眼瞼挙筋(実際には挙筋腱膜)を前に引っ張ってきて、短縮する、③ミュラー筋を縫い縮めるの3点からなります。両目で二時間ほどかかります。麻酔は局所麻酔で行いますが、意識を低下させる静脈麻酔も併用します。基本的には一泊二日の入院が必要で、費用は健康保険の範囲内でできます。
“最近、どうも肩こりがひどくて困る!”と言われる、お年寄りの方は、一度、当院皮膚科にご相談ください。

 

 

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