シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.75 健康診断における心電図

循環器科 刀禰 央朗 (とね えいろう)

心臓病の早期発見と予防は定期健康診断のなかでも最も重要な位置を占めています。
特に中高年に多い突然死は、一見健康に生活していた人がある日突然亡くなるわけですからその影響は計り知れないものがあり、今や突然死の予防と対策は社会的課題となっています。
突然死の大多数は心臓が原因と考えられています。なかでも急性心筋梗塞が一番多い原因ですが、その他の心臓病がもとになって心室細動という致死的不整脈がある日突然発生して、そのまま亡くなるというケースもあり得ます。定期健康診断の目的の一つは、一見健康な人の中からこうしたリスクを持つ人を見出し、悲劇を未然に防ぐことにあります。

その意味で、心電図はすべての心臓病診断のための基本となる簡便な検査法です。
1枚の心電図から得られる情報は、心エコー(心臓超音波検査)、負荷心電図検査、さらには心臓カテーテル検査、冠動脈造影にも匹敵するような重要な情報を含んでいます。しかし、その情報を心電図波形から読みとるには相応の経験が必要で、1つの異常所見の判断についても医師によって異なる場合があります。
最近ではコンピューター自動診断機能が付いた心電計が健康管理の現場でも普及し、循環器専門医のいない健康管理の現場でも、産業医あるいは健康管理担当者に簡単に心電図所見・判定が得られるようになってきています。問題は、得られた心電図情報をいかに健康管理に活かしていくかです。コンピューターで打ち出された異常所見・診断名がどのくらい深刻なのか、医療機関への受診を含めてどう対応すべきなのか、受診者へどう説明すれば(健康診断報告書の説明文をどう書けば)十分理解されるのか、入社健診であれば採否を決める上でさらに何をしたらよいのかなど、健康管理の現場で担当者が迷う機会が増えています。
さらに、最近では健康診断の報告書に自動的に心電図所見が記入される機関も増えてきており、受診者はその所見・診断名を見て不必要な不安をかき立てられることもあり、健診担当者への問い合わせも増えています。

そこで、これをお読みの皆様に提案です。
数年来、心電図をとったことがない方で何らかの異常所見・要精査(精密検査必要の意味)・医療機関受診の指示が報告書に記載されていた場合は、盲目的にその指示に従いましょう。本当に心臓病が隠れている病的意義のある所見かどうか、一度は精査して確かめてください。
それこそ、心エコー、負荷心電図検査などの精査が必要かもしれません。もちろん、心臓病が見つかっていきなり治療や入院が必要などといった結果になる場合もありますが、精査の結果、病的意義がない、すなわち病気ではないが正常とは言えない心電図という結論であれば、その事をよくおぼえていてください(できればメモなど記録しておく)。
そして翌年の健康診断の問診で、前年度の健診の心電図で引っかかったことや精査をしても病的意義がなかったことなどを健診担当者に伝えてください。特に心臓病を疑うような自覚症状がなく、心音などの聴診も異常なく、しかも前年度と同じ心電図所見だったら、健診担当者も要精査ではなく経過観察・何か気になる症状があれば医療機関受診といったような説明文とするでしょう。

症状もないのに毎年同じような心電図所見で引っかかり、そのたびに精査を受けていては皆様の貴重な時間と医療費のムダではないでしょうか?そのムダを省くためにも、まずは健診担当者に可能な限り前年度などの過去の心電図と比較してもらうこと、自分なりで良いので過去の心電図所見や精査結果の記録を残しておくことをお勧めします。

 

 

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