シリーズ病気 No.79 糖尿病とは
内 科(顧問) 星 充(ほし みつる)
では糖尿病とはどんな病気でしょうか、症状では口渇、多飲、多尿(3大症状)で、高血糖が続くために、のどが渇き、つい水を多量に飲んで、尿が増えるのです。しかし尿には糖分が多く含まれ(尿糖)ており、身体のエネルギー源である糖分(ブドー糖)がエネルギーとして使われずに尿に出てしまうため疲れい易いだけでなく、痩せて惨めな状態になってしまいます。健康診断で、「あなたは糖尿病の疑いがあります」などと指摘される段階では空腹時血糖は126mg/dl前後、尿糖が陽性の状態で、自覚症状はまだ認められないことが多いと思われます。
では何故糖尿病では血糖が高値になり、糖が尿に出るのでしょうか、私たちは生きてゆくために食物を摂りますが、糖質、蛋白質、脂質などの栄養分のうち、主として糖質を身体に貯えるために、膵臓から血液の中へ分泌されるインスリンというホルモンが働いています。このインスリンが何らかの理由で、充分に分泌されなかったり、分泌されても作用しなかったりすると、食物の消化吸収で血液中に入ったブドー糖が利用されずに、血液中にだぶつくことになります。健康な状態では血中のブドー糖(血糖)の濃度は空腹時で70~109mg/dl程度ですが、糖尿病の状態では126mg/dl以上、食後では200mg/dlを超える高値となります。腎臓は身体に不要になった老廃物を尿に出して、健康な状態を保つように働いていますが、ブドー糖は身体にとって大切なエネルギー源なので、無駄に尿に出さないように尿に洩れたブドー糖は再吸収しています。しかし血液が160~180mg/dlを超えると、この再吸収力も及ばず糖が尿に出て尿糖陽性となるのです。
インスリンを分泌する膵臓が、ウイルス感染や免疫の誤作動によって強く破壊されると口渇、多飲、多尿などの3大症状に悩まされることになりますが、まだあまり破壊されていない場合は、高血糖と尿糖があっても殆ど異常を感じないことが多く、きちんと治療を受けようとは思わないまま時を過ごす人が大勢いるようです。
成人になって失明したり、腎障害がすすんで透析を受けなければならなくなるような糖尿病性合併症はどのようにして発症するのでしょうか、糖尿病に何年か罹っているということは、高血糖がその期間続いていることを意味します。
血糖は血管の中を流れています。血管は3層構造の膜によって管状をしているのです。いつも高血糖に曝されている膜は充分なエネルギーを得られず、次第に劣化し綻びることになります。神経に栄養を供給する細い血管が綻びて栄養が送れず、神経が弱ってしまったのが糖尿病性神経障害です、神経が正しく刺激を伝えられないと痺れや痛みといった症状が出ることになります。 糖尿病の治療が不充分なまま5年経過すると糖尿病性神経障害が出ることになります。
糖尿病性網膜症は眼底の細い血管が綻びることによって発症します。視力の低下に気付いた時には糖尿病の治療が不充分なままほぼ10年経過してしまったと考えられます。糖尿病性腎症は腎臓の細い血管が綻びるために発症します。
身体に不必要な老廃物を巧く尿に濾過できないと血液中に老廃物が溜まり、吐気、嘔吐などの尿毒症の症状がおこります。もうこの段階では腎臓は尿を作れないため、透析によって血液中の老廃物を排除しなければなりません。糖尿病の治療が不充分なまま15年経過すると糖尿病性腎症として透析を受けなければならなくなる訳です。
以上糖尿病に特有な合併症として神経障害、網膜症、腎症について述べましたが、他にも全身の血管の動脈硬化を基にした脳梗塞、心筋梗塞、下肢壊疽などが糖尿病ではおこり易いので注意が必要です。
前述したいろいろな合併症を発症させないためには糖尿病の治療とその経過の観察が必要ですが、コントロール状態の判定には血糖、尿糖の測定以外にヘモグラビンA1C(HbA1c)が利用されています。赤血球の内にあるヘモグロビン(Hb)は肺で酸素と結合し、身体の各部に酸素を供給する役割を担っている成分でこのHbが高血糖に曝されていると変性して働きが悪くなるのです。小魚を砂糖漬けにしておくと佃煮になるように、赤血球も佃煮(メイラード反応)のように変化してしまいます。この変化した割合を示すのがHbA1cで4,3~5,8%までが正常、血糖値が高い程HbA1cの値も高くなります。
それでは糖尿病はどのように治療すれば良いのでしょうか、治療の3つの柱は、食事療法、運動療法と薬物療法です。
食事療法の基本は何を食べたら良く、何を食べてはいけないのかという事ではなく、身体に必要な栄養素(糖質・蛋白質・脂質)をバランスよく身体にあった適正な量として摂ることです。管理栄養士さんが日本糖尿病学会で編集した糖尿病患者のための食品交換表を使って詳しく説明してくれますので、栄養指導を受け実践することが大切です。
運動療法については、かかりつけの医師に相談して、どのような運動をどの程度行ったらよいか指導を受ける必要があります。
自分の健康は自分で守らなければなりません、病態に気を付け定期受診によって良好なコントロール状態を保つよう努めることが大切です。▲ ページの先頭へ戻る
