シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.82 老人性乾皮症から皮脂欠乏性湿疹―その病状と治療―

 皮膚科 部長 中川 浩一

~老人性乾皮症とは~

読んで字のごとくで、お年寄りの方の皮膚が乾燥している状態のことです。つまり、人の皮膚も老化しますので、歳をとるに従って、皮膚の表面を潤している(うるおしている)、水分や油分が枯渇していきます。すると、皮膚表面が乾燥して干(ひ)からびていくわけです。誰も歳など取りたくないものですが、しかたがない現象です。この文章を読まれている方も、足や背中を見てください。60歳を超えていると、ほとんどの方の皮膚は乾燥しているはずです。『いいや、そんなことはないぞ!』と言われる方は、立派です。皮膚が若々しいということです。

~詳しく見てみると~

で、皮膚が乾燥すると、皮膚表面の角層と言われる層がばらばらにひび割れてきます。見た目にも、粉がふいたようになります。ちょっと分かりにくいですが、写真で示します(図1)。これをシェーマにしたものが、図2のA、Bです。Aは正常な表皮(皮膚の一番外側の部分です)で、角層は整然と積み重なっているでしょう。こうだと、いろいろな化学的・物理的刺激が跳ね返されますので、かゆみなどあまり感じないわけです。ところが、Bの図のように角層が分断してパラパラになると、先ほどの刺激が、直接、表皮の細胞に刺さってきますので、かゆみを訴えられる方が多くなるわけです。
図1拡大写真はここをクリック
図2 A 拡大写真はここをクリック 図2 B 拡大写真はここをクリック

~老人性乾皮症をほうっておくと~

お年寄りの方が、よく、ぼりぼり掻いてらっしゃるのはこのような原因です。このような状態を、表題の『老人性乾皮症』と呼びますが、かゆみを伴いますので、『老人性そう痒症』とも言われます。もちろん、皮膚科や内科などで、お薬をいただくと改善するのですが、さらに放置して、ぼりぼり掻いていると、その部分が赤くなって湿疹化します(図3)。もう、生理的な現象ではなくなり、病気です。乾皮症性湿疹とか、皮脂欠乏性湿疹という病名になります。こうなってくると、さらに強い薬を塗る必要が生じますし、かゆみのために、夜も眠りにくくなります。
図3 拡大写真はここをクリック

~治療について~

老人性乾皮症の治療には、4つの大きな柱があります。
① 図2のBのように痛んだ角層を修復してやる治療です。このためには、皮膚の表面から水分・油分を補充してあげたり、あるいは、水分・油分の中から外への蒸発を防いで、これらを表皮内に保持してやる必要があります。実際には、ヒルドイドソフトクリーム、ウレパール、ケラチナミン軟膏、白色ワセリンなどの薬剤があります。特に、ヒルドイドソフトクリームはよく使われる薬剤で、たいていの方はこの薬を塗るだけで皮膚がしっとりします。一日二回くらい塗ることと、特に、お風呂上がりが効果的ですので、お肌がほてっている段階で塗るように指導しています。
② それでも、かゆみを強く訴えられる方もいます。このような方には、抗アレルギー剤と呼ばれる、かゆみ止めのお薬を内服してもらいます。いくつかの種類がありますが、いずれも、眠気以外に大きな副作用はありません。他の薬剤との併用にもほとんど問題がありません。お薬を飲むことに抵抗のある方も、かゆみを我慢するくらいなら一度はためされたらと思います。
③ 先にも書きましたが、単に皮膚が乾燥する段階を過ぎて、赤く湿疹になってしまったような人には、炎症を抑える塗り薬を処方します。いわゆる、ステロイドホルモンの入った薬ですが、みなさんが心配するようなお薬ではありません。一部では、とんでもないひどい副作用が起こると思っている方もいるようですが、皮膚科の専門医の管理のもとに、用法・用量を守って塗っていただければ、まったく問題はありません。医師の指導に反して、自分勝手に塗り続けた場合にのみ、皮膚がうすくなったり、毛が濃くなったりの副作用が生じます。
④ 皮膚のかゆみを助長するような、生活習慣は改めてください。すなわち、極端に熱いお風呂に入ることで、皮膚表面の防御膜である角層が溶け出していきます。また、お風呂でナイロンたわしのようなものを使ってごしごしこするのもやめてほしいものです。皮膚も体の一部なのです。肝臓を庇護するためのお酒を控える方をよく見かけますが、同様に皮膚もかわいがってあげてください。

~まとめ~

誰も老化したくないものです。でも、自然の摂理で、皮膚も老化していきます。いつまでも、若くみずみずしいお肌を保つためにも、ある程度、うるおいエキスを補充してあげてください。ご心配な方は、是非、当院の皮膚科を受診してください。“こんなことで、病院の皮膚科を?”と恥ずかしがらずに相談にいらしてください。

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