シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.84 狭心症と心筋梗塞

 副院長 循環器内科  金政 健

  1. 狭心症と心筋梗塞とは:

    狭心症と心筋梗塞は、虚血性心疾患といわれる病気です。心臓の筋肉に血液を送っている血管(冠動脈)が狭窄もしくは閉塞することによって起こります。狭心症と心筋梗塞の違いは、心筋の細胞が壊死を起こすか、起こさないかです。壊死を起こさないのが狭心症、起こすのが心筋梗塞です。今、まさに心筋壊死が起ころうとしている状態を不安定狭心症といい、狭心症と心筋梗塞の中間に位置しています。
     心筋が虚血(血液不足)になると、胸の圧迫感や胸痛が起こってきます。虚血が起こると、心電図で特徴的な変化が現れます。図1に虚血性心疾患の特徴的な変化を示します。心電図 II, III, aVF誘導にST上昇といわれる虚血に典型的な変化が認められます。この胸部症状が30分以上持続すると、心筋壊死の発現が示唆され、心筋梗塞の可能性が考えられます。

    図1 ECG ST上昇: 心電図 II, III, aVF誘導にST上昇といわれる虚血に典型的な変化が認められる。
  2. 心筋梗塞の起こりかたは:

    狭心症は、労作によって起こる労作性狭心症と冠動脈の収縮(攣縮)によっておこる安静狭心症があります。安静狭心症は、重症の冠動脈狭窄の存在からでも起こります。
    心筋梗塞は、冠動脈を構成している血管内膜の破裂により生じます。主として血管内膜にできた粥状硬化巣(プラ-ク)の破裂により、プラークが血管内腔に穿破し、血管内腔に血栓といわれる血液の凝集塊ができます(図2)。この血栓は通常、血小板とフィブリンから構成される白色血栓といわれる血栓です。冠動脈が完全に閉塞したあとには、赤血球とフィブリンからなる赤色血栓ができます。これらの混合物が、冠動脈を完全に途絶し、心筋梗塞が進行します。図3では、右冠動脈の重症の狭窄像を示しています。図3の狭窄を解除する目的で、方向性冠動脈切除術(DCA)といわれる方法を用いて、粥状硬化(プラーク)を切除しました(図4)。プラークは、黄白色ないし赤褐色を呈しています。これは、粥状硬化部が脂質に富んでいることを示しています。

    図2 動脈硬化における血管内膜の機能障害
    血管内膜にできた粥状硬化巣(プラーク)
    内の毛細血管からの出血により、繊維性被膜の菲薄部から血管内腔に穿破し、血管内腔に血栓といわれる血液の凝集塊(血栓)ができる
    Ross R. N Engl J Med 1999;340:115-126
    図3右冠動脈造影:
         99%の冠動脈狭窄像

    図4 方向性冠動脈切除術(DCA)により切除したプラーク:プラークは、黄白色ないし赤褐色を呈し、粥状硬化部が脂質に富んでいることを示している。
  3. 心筋梗塞二次予防:

    心筋梗塞を一回起こした後、再発しないように予防することを心筋梗塞の二次予防といい、心筋梗塞発症患者さんには重要なことです。心筋梗塞の再発を防ぐには、生活習慣の改善や、高血圧、糖尿病や慢性腎臓病といわれる生活習慣病の増悪をおこさないようにすることが大事です。二次予防に効果があるとされている薬剤は、β遮断薬、脂質異常改善薬、抗血小板薬などがあります。硝酸薬は、二次予防には効果はありませんが狭心痛を発生させないようにするという生活の質(QOL)を改善するためには有用です。硝酸薬の使用は、硝酸薬持続使用による硝酸耐性出現防止のために、24時間持続して血中濃度が上昇する使い方は避けてください。ニトログリセリン貼付薬は、24時間貼付するのではなく、胸痛発作が出現する時間帯に合わせて使ってください。例えば、狭心症の出現する時間が昼間ならば、朝貼付、夜剝離してください。夜間もしくは早朝に胸痛発作が出現する場合は、寝る前に貼付し、朝剝離してください。硝酸薬の内服であれば胸痛発作が出現する時間に合わせ、昼間に発作が出る場合には、朝内服か朝・昼内服、夜間もしくは早朝に発作が出る場合には夜に内服してください。

  4. まとめ 

    狭心症や心筋梗塞の発生予防には、生活習慣の改善や合併する疾患の治療が重要です。

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