シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.87 下肢静脈瘤

 内科(副院長) 大谷 正勝

  1. 下肢静脈瘤とは:

    足の静脈が右図のように“こぶ”のように膨らんだ状態をさしています。静脈の中の血液は、立っているときも重力に逆らいながらも心臓に戻っていきます。これは足の筋肉の収縮作用(運動)と、静脈の中にある逆流防止弁(静脈弁)の働きのためです。これらによって足の血液の静脈循環が円滑に行われています。
    しかし、下肢静脈系の血液還流がうまく働かなくなると血液は心臓の方に進まなくなり、足に血液が溜まりがちになり、静脈が膨らむのです。静脈瘤には一次性静脈瘤と二次性静脈瘤があります。一次性静脈瘤が普通によくみられる静脈瘤です。二次性静脈瘤は深部静脈(足の深いところにある静脈)の閉塞に伴う部分的な病状です。
    ここでは一次性静脈瘤について述べます。

  2. 一次性静脈瘤のタイプ:

    静脈瘤の発生部位と性状によって次のように分類されています。

    1. 伏在静脈瘤:右図のように大腿から下腿にかけて認められます。
    2. 側枝静脈瘤:膝を含めた下腿に限局していることがほとんどです。
    3. 網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤:皮膚表層の細静脈拡張で自覚症状はありません。

  3. 症状:

    軽症の場合は美容上の問題だけですが、次第に自覚症状として、足のだるさ、重圧感、夜間のこむらがえり、疼痛、熱感、むくみなどが現れてきます。さらに進むと皮膚に変化が生じます。
    以下に病状の進行度を示します。

    1. Class 0:自覚症状なし
    2. Class 1:自覚症状あり
    3. Class 2:自覚症状あり+皮膚病変(皮膚の変色,湿疹)
    4. Class 3:疼痛,潰瘍形成
  4. 合併症:

    静脈瘤は時に炎症や出血を起こすことがあります。

    1. 血栓性静脈瘤炎:静脈瘤が赤くなり熱感をもちます。抗炎症剤の投与で治まります。
    2. 静脈瘤よりの出血:直達的外傷がなければまれですが、潰瘍例ではよく起こります。
  5. 静脈瘤の原因:

    一般的にいえば、患者さんにおいて、家族の方が静脈瘤をもっている率は27~70%と報告されており、遺伝的な壁や弁の脆弱性がその発生の大きな要因なっているものと考えられます。それに加えて、以下のようなことが契機となり静脈瘤が発生する場合が多いと考えられます。

    • 静脈瘤発生の促進因子
      1. 年齢:静脈瘤は年齢とともに増加します。
      2. 妊娠、分娩:女性患者さんのうち、40-50%が分娩を契機として静脈瘤が発生しています。
      3. 生活様式:特に長時間の立仕事に従事されている方に多いことも事実です。
  6. 治療:

    網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤はほとんどの場合、範囲が広がることはあっても、病状は前述のclass 0のままでです。したがって、美容上の問題だけです。
    しかし、伏在静脈瘤と側枝静脈瘤はclass 0からclass 3にゆっくりと進行します。Class 0と1の段階では保存的治療が主体となります。Class 2,3は積極的な治療が望ましいと考えられます。

    1. 保存的療法とは
      静脈瘤の進行防止が目的で、静脈瘤そのものが治るわけではありません。日常生活の改善と弾力ストッキングの着用による圧迫療法を行います。日常生活で注意することは長時問の立位はできるだけ避けること、それが仕事上できない場合は、時々、休息をとることであります。その際、足を挙上したり、また、歩行や足踏みをします。弾力ストッキングは起床特から入浴を除く就寝特まで常に着用するが大切です。
    2. 積極的治療
      静脈瘤化した静脈そのもをなくししまうか、あるいは、血液が静脈瘤内に入り込まないようにすることが目的です。その方法に下記のようなものがあります。
      1. 硬化療法:静脈の中に、硬化剤という薬剤を注入し、静脈の内側の壁と壁をくっつけて詰めてしまう方法です。注射するだけですのできわめて簡便です。
      2. 硬化療法併用静脈瘤切除/高位結紮手術:硬化療法だけで、すべての下肢静脈瘤が治療できればよいのですが、軽度の静脈瘤以外には有効とはいえません。そこで、大きな静脈瘤を切除し、小さなものは硬化療法で対処するものです。高位結紮とは障害をおこしている静脈と本幹(深部の静脈)の合流部を縛って血液の流入を遮断する方法です。手術は局所麻酔で行い、後述のストリッピング手術より簡単ですので、一般的によく行われています。
      3. ストリッピング手術(静脈抜去手術):下肢静脈瘤の根治的な治療法として古くから行われている手術で、障害をおこしている静脈を広範囲に引き抜いてしまう手技です。全身麻酔あるいは下半身麻酔下で行いますが、手術そのもが大きくなります。
      4. その他の治療法
        レーザー治療・弁形成術・内視鏡使用手術などがありますが、一長一短です。頻尿、尿意切迫感でお困りの方は過活動膀胱の可能性があるので、泌尿器科受診をお勧めします。

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