シリーズ病気 No.88 乳がんについて
外科(副院長) 荻野 信夫
- 乳がんとは
”乳房”は乳頭を中心に15-20個の乳腺が並んでいてそれぞれの乳腺は小葉に分かれ乳管につながっています。乳がんのほとんどは乳管から発生し”乳管がん”と呼ばれています。一方小葉から発生するがんも少数ながらあり、”小葉がん”と呼ばれます(図1参照)。 乳がんは癌細胞が増え始めるとしこりになりますが、食欲が減ったり体調不良になるなどの全身症状はほとんどありません。チブサの変化に気づかず放置すると血管やリンパ管を通って全身へと拡がっていきます。 (図1)
- 乳がんの発生
乳がんの発生・増殖には女性ホルモンであるエストロゲンが重要な働きをしています。乳がんのリスク要因は体内のエストロゲン・レベルに影響を与える様なものがほとんどです。すなわち1)初経年齢が早い、2)出産歴、授乳歴がない、3)閉経年齢が遅い、4)高身長、閉経後の肥満があげられます。また食物、栄養との関連をみるとアルコール、総脂肪はリスクを上昇させ、野菜、果物、適度の運動はリスクを低下させると報告されています。
日本ではここ30年の間に乳がん発生は4倍に増加し、1年間におよそ4万人の女性が乳がんと診断され、1万人が死亡しています。今後の日本女性は15人に1名が生涯1度は乳がんに罹患する勘定です。女性の部位別がん発生率をみると大腸がん、胃がん、肺がんと比して乳がんは40-50歳の若い年代の発生率が高いのが特徴です。(図2)
図1 
図2 
- 乳がん死亡を防ぐために
日本の年間乳がん罹患率は10万人あたり50人で毎年増加傾向にあり、つい最近胃がんを抜いて女性の癌の一位となりました。欧米白人に比べるとまだ1/3程度にすぎませんがライフスタイルの欧米化とともに増加、特に閉経後の乳がんが増加するものと考えられます。
乳がんには確実な予防法はありません。早期発見・早期治療が最善の対処法といえます。 早期発見法としては乳がん検診があります。わが国では長い間、諸外国に例をみない視触診のみの検診を行った結果、明らかな死亡率減少効果は証明されずその有効性は不十分であるとされました。しかし乳がん検診にマンモグラフィーを導入した欧米諸国の成績では50歳以上で23%の死亡率減少効果が認められ有効とされました。実際、アメリカ・イギリスでは受診率70%以上のマンモグラフィー受診により1990年代後半から乳がん発生は増加しているものの乳がん死亡率は減少しています。(図3)
日本でも平成16年度から市町村の乳がん検診(40歳以上)にマンモグラフィーが取り入れられました。マンモグラフィー検診受診率は全国平均(2007)で20%、宮城県(33%)のように熱心な自治体がありますが大阪府は15%とまだまだ死亡率減少に必要な70%にはほど遠いのが現状です。無料又はごくわずかの負担金で受診できますので是非利用してください。
図3
ぃmれもn - マンモグラフィーとは:
乳房専用のX線撮影装置で乳房を挟んで撮影します。しこりとして触れないごく早期の乳がん(石灰化)も発見できます。撮影時間は5分程度、その被曝量はごくわずかでほとんど危険性はありません。乳がん検診では専用装置と専門医2名によるダブルチェックで十分な精度管理を行っております。
以上乳がん検診の重要性を述べましたが、乳がん早期発見に最も大切なことは何といっても自己検診の励行と考えられます。実際乳がん患者の9割弱が自分自身で乳房の異常に気づいており、早期乳がんの発見には毎月一回の触診と視診による自己検診が最も重要と考えられます。そして、しこりや異常乳頭分泌がある際には間髪を入れず、恐れずに乳腺専門外来を受診して下さい。早期乳がんであれば転移の心配もなく、乳房を温存する手術法を選択することができ、治癒が十分期待できます。自己検診について方法が良くわからない方は当院外科外来に小冊子がありますので差し上げます。どうぞお申し出下さい。
