シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.90 月経痛について

 婦人科(部長)鷲田 彰子 

月経困難症は月経に随伴して起こる下腹部痛を主症状とする症候群です。月経痛は本来月経困難症の中の一つの症状ですが、両者は同義に用いられることも多いです。
月経困難症は器質的な原因による器質性月経困難症と機能性月経困難症に分けられます。月経困難症の症状としては、下腹部痛・腰痛・頭痛・嘔気・疲労感・いらいら感・下痢・抑うつなど色々あります。
月経痛の度合いは人それぞれ異なり、日常生活に支障をきたすことも多くみられ、様々な疾患が原因のこともあります。

1. 機能性月経困難症 

初経後3年以内に始まります。痛みは月経時にのみ認め、月経の初日および2日目ごろの出血が多い時に強く認めます。子宮内膜から産生されるプロスタグランジンなどによる子宮筋肉の収縮が疼痛の主な原因と考えられています。
また、腰痛・嘔気・頭痛・下痢などの全身症状はプロスタグランジンやその代謝物質などが体循環に流入したため起こるものとされています。月経痛が強い人は、無症状の人に比較してこのプロスタグランジンの産生を多く認めます。

2. 器質性月経困難症 

初経後5年以上経過してから始まります。痛みは月経時以外にも認めることがあります。原因疾患として、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫・骨盤内炎症性疾患・子宮奇形・子宮内避妊器具などがあります。

3. 月経痛の治療

  1. 薬物療法
    1. 非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)
       一般的に痛み止めと言われている薬剤のことです。月経困難症の痛みにはプロスタグランジンが深く関与していることから、そのプロスタグランジン合成阻害剤であるNSAIDsが有効であり第一選択薬となります。アスピリン、メフェナム酸など色々な薬があり、市販薬も種々のメーカーから発売されています。効果は人それぞれ異なりますが、80パーセントの患者に有効とされており、色々な薬剤を試してみるとよいでしょう。
      また、腹痛以外の全身症状(腰痛、嘔気、頭痛など)も改善できることも多く認めます。
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      ただし、痛みがひどくなってから服用すると効果が低いため、予定月経開始前から内服するほうが効果的です。
      薬の副作用としては、胃腸障害・めまい・浮腫などがありますがほとんど軽度ですむことが多いです。また、喘息やアスピリン過敏症の方は内服できないので注意が必要です。   
    2. 低容量経口避妊薬(low-dose oral contraceptive pill:OC
       NSAIDsで症状が改善されない場合や副作用が問題となる場合に適応となります。服用によって子宮内膜の増殖が抑制されるためプロスタグランジン濃度が低くなり子宮収縮が減少し、また月経量も少なくなり、月経痛が軽減されます。副作用としては、悪心・嘔吐・浮腫・不正性器出血など軽度のものから静脈血栓塞栓症などがあります。最近では子宮内膜症の治療薬として、ルナベルという薬剤が保険適応となり使用できるようになりましたが、月経困難症の治療目的ではルナベルは保険適応となりませんので、機能性月経困難症の方は他のOCを内服することになります。
      月経量が多く貧血気味の方も有効ですし、機能性月経困難症の方の90パーセント以上で疼痛が軽減されます。医師の指導の下で内服すれば危険な薬剤ではありませんので、鎮痛薬で効果が無い方は医師に相談してください。
    3. 他の薬剤
      非ステロイド系消炎鎮痛薬や低容量経口避妊薬以外には、子宮収縮抑制薬・漢方薬・抗不安薬などあり、医師と相談の上各人それぞれにあった薬剤を飲まれるといいでしょう。
  2. 非薬物療法
    心理的因子により痛みが悪化することが多々あり、このときはカウンセリングが必要となります。また運動したり下腹部や腰部を温めたりすることも有用なことがあります。ストレスをためないようにすることも必要です。
    またどうしても薬物療法でコントロールが出来ない場合は、腹腔鏡下で腹腔内を診て原因検索することもあります。

4. 器質性月経困難症の治療

器質性月経困難症の原因疾患には上記に記載した種々の疾患があり、各疾患の治療が必要となります。

月経困難症は各人で程度や症状が様々です。中には生活に支障がでるほど程度がきつく、学校や仕事を休んだり急激な腹痛で救急車を呼んだりされる方もおられます。薬をなるべく飲まないようにと毎月我慢していらっしゃる方も多いのですが、原因疾患がある場合がありますし、薬で症状を軽減できる場合が多いので早めに婦人科を受診して相談してください。適切な診断を受けて健やかな生活をおくるようにしていただければと思います。

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