シリーズ「病気」

シリーズ病気 No.95 虫垂炎

外科(医長) 文元 雄一

  • 急性虫垂炎とは
    小腸から大腸に移った直後の大腸を盲腸といい、その末端からぶら下がった細長い突起物を虫垂といいます。その虫垂が何らかの原因で閉塞し、内部で細菌が増殖して感染を起こした状態を虫垂炎といいます。炎症が進行すると虫垂は壊死を起こして穿孔し、腹膜炎を起こすなど重症化することもあります。若年者から高齢者まで幅広く発症し、男女差もみられません。
  • 症状と診断法
    典型的な症状は最初に心窩部痛が始まり、次第に右下腹部痛へと移動します。多くの場合、食思不振、嘔気嘔吐、下痢などの症状を伴います。発熱は37~38℃程度のことが多く、39℃以上の場合は穿孔性腹膜炎や膿瘍形成の可能性を考えます。 診断方法には次の3つがあり、炎症の程度を診断して治療方針を決定します。また同じような症状を呈する疾患に腸炎・大腸憩室炎・卵巣腫瘍・子宮外妊娠などがあり、これらを鑑別します。

    1. 触診:圧痛の程度や筋性防御(腹膜炎)の有無を確認します。
    2. 血液検査:炎症が強いと白血球数やCRPが異常高値を示します。
    3. 腹部CT検査:虫垂の腫れ具合や腹水・膿瘍の有無を確認します。
  • 治療方法
    1. 保存的治療:症状が軽微な場合は、絶食と抗生剤投与による治療を行います。しかし、症状が強い場合や保存的治療にて症状の改善がない場合には躊躇せず手術を行う必要があります。
    2. 手術治療:
      1. 開腹手術・・・従来より施行されている手術法。右下腹部に約5~6cm程度の切開を入れて、直視下に虫垂を切除する方法。
      2. 腹腔鏡下虫垂切除術・・・1988年に外科手術に腹腔鏡が導入(腹腔鏡下胆嚢摘出術)されて以降、手術手技の向上や器具の改良に伴い、腹腔鏡手術は飛躍的に進歩しており、現在では外科手術のなかでも大きな比重を占めております。腹腔鏡下虫垂切除術では、おへその縁に沿った1.5cm程度の創から腹腔鏡と呼ばれるスコープを腹腔内に挿入し、さらに右側腹部と下腹部の2か所の0.5cm程度の創から手術器具を挿入して虫垂を切除します。切除した虫垂は直接あるいはバッグに入れておへその創から取り出します。手術時間は40~60分程度で、術後は翌日から食事を開始し、特に問題なければ3~4日目には退院可能となります。腹腔鏡下虫垂切除術では開腹手術に比べて、①創が小さい②痛みが少ない③腹腔内の視野が良好(他臓器の観察が可能)④腹腔内の十分な洗浄が可能 など多数の利点があり、整容性・疼痛・診断・治療などのあらゆる面で患者様が受けられるメリットは大きいと考えられます。

当院においては急性虫垂炎に対して2000年6月に腹腔鏡手術を導入して以来、これまでに200例以上の腹腔鏡下虫垂切除術を経験しており、現在では原則としてすべての虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術を標準術式としています。右下腹部痛など急性虫垂炎を疑う症状が出現しましたら、お早めに当科にご相談下さい。

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