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<ヘルニアセンター開設に当たって>

「鼠径(そけい)ヘルニアについて—早めの手術が肝心」 

富田林病院 副院長(外科)
              荻野信夫

“ヘルニア”とは「じゃまに出っ張っているもの」という意味で整形外科でお世話になる椎間板ヘルニアを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、下腹部の足の付け根(鼠径部)の筋肉のすき間からお腹の中の臓器(腸など)が外に飛び出し、膨らむ状態を“鼠径ヘルニア”と呼びます。これは俗に「脱腸」とも呼ばれています。

1. 症 状

 立ち上がったり、お腹に力を入れると腸が出て、そけい部が膨らみます。通常は手で押さえるとお腹に戻ります。放置して年月がたつと徐々に脱出がひどくなり、精巣近くまで膨れてまるで信楽焼のオス狸の置物のようになります。またすき間が狭くなって腸が出っぱなしになって戻らなくなる「かんとん」と呼ぶ状態になると、腸がうっ血して腐ることもあるので緊急手術が必要になり、手術の危険度も増します。

2. 原 因

 小児期のソケイヘルニアの多くは生まれつきのものですが、成人のものはソケイ部の筋肉組織が弱くなって生じます。また腹部に力がかかりやすい男性に多いと言われていますが女性にも少なくありません。

3. 治 療

 昔からある脱腸帯(ヘルニアバンド)は腸を出ないように押さえこむだけで根本的な治療にはなりません。新生児、乳児期のそけいヘルニア以外は自然治癒はないのでしっかりと治療するには手術しかありません。手術を焦る必要はないものの「かんとん」が起きないうちに治療をしておくことが大切です。
手術は足の付け根を5-6 cmほど切開してポリプロピレンと呼ばれる人工素材の糸を編んで作ったメッシュやプラグを使ってヘルニアの穴をふさぐ方法が主流ですが、当院ではお腹に3カ所の孔を開け、内視鏡を入れてモニターを見ながら腹壁の内側からメッシュを広くあててヘルニアの穴をふさぐ方法(腹腔鏡下そけいヘルニア手術)で良好な成績を上げています。
 この方法は傷が小さいため痛みも少なく、日常生活への復帰が他の手術方法に比べて短いというアンケート結果がえられました。入院期間はおおよそ数日から1週間前後で、退院後の安静の必要もありません。当院では1994年からいち早くこの術式を導入し、研鑽を積んで参りました。関西では経験数において有数の施設です。
 現在まで四百名以上の方がこの手術を受けられましたが、最近では術後のヘルニア再発はほとんどありません。ただし、全ての患者さんがこの手術を受けられるわけではありませんので詳しいことはヘルニアセンター外来(火曜、木曜午前)を受診して、専門医にご相談下さい。

4. 手術成績

当センターでのメッシュを用いたヘルニア手術成績(1998-2005)を患者アンケートを中心に比較しました。


メッシュプラグ法 PHS法  腹腔鏡下手術(TEP) 
 再発率  6.3% 0.5% 0.5%
術後感染 3.1% 2.3% 1.1%
メッシュの感染 2.1% 1.2% 0.5%
術後疼痛 36% 34% 21%
異物感 31% 19% 18%
日常生活への復帰 12.7日 11.7日 9.4日

 何れの項目も腹腔鏡下手術(TEP)が優れているという結果が明らかになりましたので、当センターでは2004年よりTEPを標準術式にしております。また手術には内視鏡外科学科学会の技術認定(TEP)を取得しているものがたずさわります。

5. 入院、治療の実際

○ 初診: ヘルニア外来(火曜午前、木曜午前)を受診していただきます。その日のうちにCT検査や術前検査、入院説明を済ませます。(火、木以外の外科外来も受付可能です。)
○ 入院、手術: 手術前日に入院、術後は3-6日目に退院していただきます。
○ 入院費用(3割負担):腹腔鏡下手術は16-18万円になります。

富田林病院地域医療連携室

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